魔術師のおい

魔術師のおい：ナルニア国物語の起源

『魔術師のおい』（原題：The Magician's Nephew）は、C・S・ルイスが贈る人気児童文学シリーズ『ナルニア国物語』の1冊です。シリーズの中でも特に古い時代、ナルニア世界が創造されたばかりの時代に焦点を当てた物語となっています。他の作品よりも先に書かれたものの、シリーズ時系列においては最も古い物語として位置付けられ、後に続く『ライオンと魔女』などへの伏線を巧みに織り込んでいます。岩波書店から出版されている瀬田貞二氏による翻訳版が広く知られています。

ナルニア世界の創造

この物語は、まさにナルニア世界の創造物語です。聖書の『創世記』を思わせる壮大なスケールで、新しい世界の誕生が描かれています。しかし、キリスト教の知識がなくても十分に楽しめる物語として構成されており、子供から大人まで幅広い読者層に魅力を提供しています。

物語は、好奇心旺盛な子供たちの視点を通して展開されます。ロンドンに住むポリーとディゴリーという二人の子供は、ディゴリーの叔父である錬金術師アンドルーの魔法の指輪によって、不思議な世界へと迷い込んでしまいます。

魔法の指輪と異世界への旅

アンドルーが作った魔法の指輪は、異なる世界へと繋がる不思議な力を持っていました。その指輪の力を試すべく、アンドルーは甥のディゴリーとポリーを巻き込み、危険な実験を決行します。その結果、二人は「世界と世界の間の林」と呼ばれる場所にたどり着きます。そこは、無数の池が点在し、それぞれの池が様々な世界へと通じる入り口となっていました。

チャーンとジェイディス女王

二人が最初にたどり着いたのは、滅びゆく世界「チャーン」でした。そこで彼らは、チャーンの最後の女王であるジェイディスと出会います。彼女は冷酷で邪悪な女王であり、彼女との出会いが、後の物語に大きな影を落とすことになります。

ナルニア誕生とアスラン

ポリーとディゴリーは、ジェイディスを連れてロンドンに戻ろうとしますが、様々な出来事が起こり、再び別の世界へと迷い込みます。そこは、混沌とした暗闇に包まれた、何もない世界でした。しかし、やがて不思議な歌声が響き渡り、世界は徐々に姿を変えていきます。それは、アスランによるナルニア世界の創造の始まりでした。

巨大なライオンの姿をしたアスランは、ナルニア世界の創造主であり、この物語の重要な存在です。彼はディゴリーに、遠い荒野にある果樹園からリンゴを一つもぎ取ってくるよう命じます。このリンゴは、物語の重要なアイテムであり、後の出来事に深く関わってきます。

多様な翻訳版

『魔術師のおい』は、日本語にも様々な翻訳版が存在します。代表的なものとしては、瀬田貞二氏による岩波書店の翻訳版、土屋京子氏による光文社古典新訳文庫版、そして河合祥一郎氏による角川文庫版などがあります。それぞれの翻訳版で、表現やニュアンスが異なっており、それぞれの魅力を楽しむことができます。

まとめ

『魔術師のおい』は、ナルニア国物語の起源を描いた、壮大で魅力的な物語です。魔法、冒険、そして善と悪の対立など、多くの要素が織り込まれており、子供から大人まで楽しめる作品となっています。ナルニア世界のファンならずとも、一度は読んでみる価値のある一冊と言えるでしょう。

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