C・S・ルイス

C・S・ルイス：信仰と想像の軌跡

1898年、アイルランドのベルファストで生まれたクライブ・ステープルス・ルイスは、弁護士の父とアイルランド国教会の司祭の娘であった母を持つ家庭で育ちました。3歳の時に愛犬を失った悲しみは、彼に生涯「ジャック」という愛称を残しました。幼少期には兄とともに独自の想像上の世界「ボクセン」を創造し、物語を紡ぎだすなど、豊かな創造性を育みます。

その後、オックスフォード大学に進学し、古典語と英文学で優秀な成績を収めました。第一次世界大戦に従軍したのち、母校に戻り、のちに『指輪物語』で知られるJ・R・R・トールキンと出会います。ルイスはモードリン・カレッジで英文学の研究員、後にケンブリッジ大学で中世・ルネッサンス英文学の教授を務めるなど、学者としての道を歩みました。

ルイスの知的探求は、信仰という側面とも深く関わっています。幼少期のキリスト教信仰から離れ、一時は無神論に傾倒したのち、30代でイングランド国教会に回帰。以降は、『奇跡』『悪魔の手紙』『キリスト教の精髄』などの神学書や自叙伝を執筆し、熱心なキリスト教擁護者、信徒伝道者として活動しました。

ルイスの著作は多岐に渡ります。詩集、神学論文集に加え、代表作である『ナルニア国物語』全7巻は世界中で愛され続けています。このシリーズは、ファンタジーの世界にキリスト教的な寓意を織り込み、子供から大人まで幅広い読者に訴えかける作品となりました。

私生活では、第二次世界大戦後に愛読者であったアメリカ人詩人ジョイ・デイヴィッドマンと結婚。しかし、この結婚はジョイの病状、離婚歴、そして非キリスト教徒（後に改宗）であるという背景から、周囲から強い批判を受けました。この結婚は、ルイスとトールキンとの関係悪化にも繋がったといわれています。ジョイは結婚から数年後に亡くなり、ルイスはその悲しみを『悲しみを見つめて』に綴っています。

ルイスは、1963年、65歳の誕生日の直前に心筋梗塞で亡くなりました。彼の死は、文学、神学、そしてキリスト教思想の世界に大きな損失をもたらしました。しかし、彼の残した作品は、今日でも世界中の人々に読み継がれ、想像力、信仰、そして人間の深遠な精神性を問いかけ続けています。

主要作品

『ナルニア国物語』: ライオンと魔女、カスピアン王子のつのぶえ、朝びらき丸 東の海へ、銀のいす、馬と少年、魔術師のおい、さいごの戦い

別世界物語: マラカンドラ 沈黙の惑星を離れて、ペレランドラ ヴィーナスへの旅、サルカンドラ いまわしき砦の戦い

小説: 天国と地獄の離婚、愛はあまりにも若く プシュケーとその姉

宗教著作: 悪魔の手紙、四つの愛、痛みの問題、キリスト教の精髄、詩篇を考える、悲しみを見つめて、神と人間との対話、栄光の重み、偉大なる奇跡

ノンフィクション: 愛とアレゴリー、廃棄された宇宙像、喜びのおとずれ

ルイスの作品は、数多くの言語に翻訳され、世界中で読まれています。彼の生涯と作品は、信仰と想像力の調和、そして人間の存在の意味を問い続ける、現代にも通じる普遍的なテーマを提示し続けています。

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