魚屋栄吉

魚屋栄吉の概要

魚屋栄吉（うおや えいきち）は、江戸時代末期に活動していた浮世絵の版元であり、その正確な生没年は不明ですが、その影響力は当時の芸術において重要な役割を果たしました。魚屋としても知られ、他に「小田屋」や「魚栄」との号を持ち、いくつかの名義で作品を世に送り出しています。

来歴

栄吉は幕末の時代に、下谷新黒門町上野広小路で営業していました。この時期、彼は浮世絵師の歌川広重や歌川国貞、また2代目と3代目の歌川広重に作品を依頼し、多くの美しい錦絵を出版しました。これにより、彼の流通した作品は多くの人々に視覚の楽しみを提供し、浮世絵文化の発展に寄与しました。

主な作品

栄吉が出版した作品の中でも特に有名なのが、歌川広重による『名所江戸百景』です。これは安政3年から5年（1856年から1858年）にかけて制作され、大判の錦絵118枚から構成されています。このシリーズは江戸の名所をテーマにしており、貴族や商人たちに広く愛されました。

また、3代目歌川豊国の作品『今様見立士農工商』も彼の手によるものです。この作品は安政4年（1857年）に発表され、女性のみを描いた大判3枚続きの作品として特徴的です。栄吉の店の様子を描写し、当時の生活を感じさせる内容となっています。

さらに、歌川国貞や3代目歌川広重による『豊国漫画図絵』も注目に値します。これは安政6年から万延元年（1859年から1860年）にかけて発売された大判の錦絵揃物であり、当時の風俗をユーモラスに表現しています。

また、2代目歌川広重の『諸国名所百景』は、安政6年から文久1年（1861年）にかけて制作され、全国各地の名所が描かれています。このように、彼の出版物は江戸時代の名所や生活様式を追体験させる貴重な資料となっています。

参考文献

栄吉の作品やその影響を知るためには、いくつかの文献に目を通すことが重要です。例えば、日本浮世絵協会が編纂した『原色浮世絵大百科事典』の第3巻や、吉田漱の『浮世絵の基礎知識』、小林忠と大久保純一の『浮世絵の鑑賞基礎知識』などがあります。これらの文献では、浮世絵や栄吉の作品について深く掘り下げた情報が提供されています。

結論

魚屋栄吉は、江戸時代末期の浮世絵文化において重要な版元であり、その活動は多くの芸術的遺産に貢献しました。彼の作品は、現在に至るまで多くの人々に評価され、浮世絵の魅力を伝え続けています。

もう一度検索