鰻香内閣

鰻香内閣（まんこうないかく）についての詳細

概要

「鰻香内閣」とは、1914年に発生したシーメンス事件を受けて、山本権兵衛内閣が総辞職した後の一連の騒動を揶揄する表現です。特に、貴族院顧問官であった清浦奎吾が組閣の大命を受けて辞退に追い込まれたことを示しています。この名称は、清浦の組閣過程とそれに関わる政治的な背景を形象化したものです。

背景

シーメンス事件によって、山本権兵衛首相が率いる内閣は厳しい批判を浴びました。海軍と特定企業の癒着が明らかになったことで、海軍予算の削減が提案され、これに貴族院の研究会と茶話会が強く反発しました。両会派は超然主義を掲げ、政党政治に対して否定的でしたが、山本内閣への倒閣運動を進め、それを成功させました。

幻の内閣の成立過程

1914年の3月24日、山本内閣が総辞職した後、元老たちは徳川家達を後継首班に推薦しましたが、家達は辞退しました。すると、3月31日に清浦が後を引き継ぎ、大正天皇から組閣の命を受けます。清浦は陸軍の岡市之助を新閣僚に内定し、他の大臣もほぼ決まったものの、彼の内閣は「超然内閣」としての色彩が強くなりました。

清浦は特に海軍大臣に加藤友三郎を望んでいましたが、反対側の政党から強い抵抗に遭い、清浦は海軍大臣の推薦を拒否されました。これは、清浦が新艦艇建造計画の復帰を渋ったためでした。結局、4月7日には組閣を断念し、次代の首相には大隈重信が選ばれることになります。

名称の由来

清浦は記者団に対し、組閣の難しさを例えて「大和田の前を通っているようなもので、匂いだけはするが、御膳立てはなかなか来ない」と表現しました。これは、人気の鰻屋の前を歩く様子を引き合いに出した非常にユニークな比喩です。世間はこれを面白がり、結局清浦は内閣といううな丼にはありつけず、ただ匂いだけがするこの状況を、「鰻香内閣」と名付けました。

その後の影響

清浦の失敗は、支援勢力である研究会にも大きな失望をもたらしました。もともと、研究会は平田や茶話会による倒閣運動の中で形成された会派であり、その運動が清浦の組閣の失敗に繋がったことに、議員たちは不満を募らせました。これは彼らの間の対立を激化させ、結果的に研究会は政友会と手を結ぶようになり、茶話会は新たな政策を模索することとなりました。

その後、1924年には再度清浦に大命が降下され、最終的に清浦内閣が成立しました。この内閣は、貴族院議員を多く揃えた超然内閣でありましたが、以前の対立が影響し、再び政治的な緊張を引き起こしました。清浦内閣はしばしば「幸三派」と呼ばれるグループからの批判にさらされることになり、これが日本の政治に与える影響は無視できませんでした。

結論

「鰻香内閣」は、清浦奎吾の組閣失敗を象徴する名であり、政治の不条理を示す一例として、時代の風刺ともなっています。この一連の出来事は、日本の政治史における興味深い教訓を提供しています。

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