鱒 (映画)

ジョゼフ・ロージー監督、イザベル・ユペール主演による1982年製作のフランス映画『鱒（La Truite）』は、ロジェ・ヴァイヤン原作の小説を映画化した作品です。鱒の養殖を営む女性が、その鱒のように他力本願的に社会的地位を高めていく様を、独特のゆったりとしたテンポで描いた異色のドラマです。

本作は、フランスのオー＝ド＝セーヌ県ヴィル＝ダヴレーやジュラ県に加え、日本各地でもロケが行われました。日本の撮影では、山形勲氏、藤川一歩氏、賀田裕子氏など、日本映画史に名を刻むベテラン俳優たちが参加。特に、山形勲氏は衣笠貞之助監督の『地獄門』、黒澤明監督の『七人の侍』などに出演した名優であり、藤川一歩氏は新城卓監督の『オキナワの少年』で主演を務めた実績を持つ俳優です。賀田裕子氏は、テレビドラマ『将軍 SHŌGUN|将軍_SHŌGUN』や『必殺仕事人』シリーズなど、数多くの時代劇作品で活躍した人気女優です。さらに、資金協力者としても参加したとされる大屋政子氏もカメオ出演しており、当時流行していたスカート姿で踊るシーンが見られます。

音楽面では、サントラLPもリリースされました。リチャード・オブライエン（「ロッキー・ホラー・ショー」の音楽担当）によるロックテイストの楽曲がフィーチャーされていますが、映画本編には使用曲やミュージシャンのクレジットがないため、実際にはどのようなミュージシャンが参加しているのかは、映画を観ただけでは判断できません。

撮影監督のアンリ・アルカンと美術監督のアレクサンドル・トロネールは、1983年の第8回セザール賞において、それぞれ撮影賞と美術賞にノミネートされ、アルカンは最優秀撮影賞を受賞しました。この受賞は、本作の高い技術力を示す証となっています。

日本では、1990年代にアテネ・フランセ文化センターで無字幕上映されたことがありましたが、一般の商業ルートでは公開されず、長らく日本で観る機会は限られていました。しかし、2012年10月16日にはWOWOWシネマの特集番組「亡命者ジョゼフ・ロージーの栄光」の一環として、字幕付きでテレビ放映され、多くの日本視聴者が初めて本作を鑑賞する機会を得ました。2018年には東京日仏学院でも上映されました。

『鱒』は、フランスと日本の文化が融合した、独特の雰囲気を持つ作品です。イザベル・ユペールをはじめとした豪華なキャスト陣の演技、美しいロケーション、そして、独特な音楽など、見どころ満載の作品となっています。日本では、商業上映の機会が限られているため、貴重な作品と言えるでしょう。 スタッフクレジットは以下の通りです。

製作総指揮：クリスチャン・フェリー
監督・脚本：ジョゼフ・ロージー
原作：ロジェ・ヴァイヤン
台詞・脚本：モニーク・ランジュ
撮影監督：アンリ・アルカン
美術監督：アレクサンドル・トローネル
編集：マリー・カストロ・ヴァスケス
音楽：リチャード・ハートレイ
製作：ゴーモン、TF1
上映時間：103分
フォーマット：カラー映画（フジカラー）、ビスタ・サイズ（1.66:1）、モノラル録音
公開日：フランス 1982年9月22日、アメリカ合衆国 1983年5月27日
* 配給：ゴーモン、トライアンフ・フィルムズ

キャストは、イザベル・ユペール、ジャン＝ピエール・カッセル、ジャンヌ・モロー、ダニエル・オルブリフスキなど、フランス映画界を代表する俳優たちが名を連ねています。 日本の俳優陣も、それぞれの持ち味を生かした演技で作品に深みを与えています。この国際的なコラボレーションが、『鱒』という独特の作品を生み出したと言えるでしょう。

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