鳥居利右衛門

鳥居利右衛門：吉良家家臣の生涯と赤穂義士との最期の戦い

鳥居利右衛門（とりいりえもん、1643年-1703年）は、江戸時代前期に活躍した武士であり、高家旗本として知られる吉良義央に仕えた家臣でした。幼名は正次。寛永20年（1643年）、吉良家家臣である鳥居吉次の息子として誕生しました。父である鳥居吉次は元禄4年（1691年）に亡くなっており、利右衛門はこの頃に家督を相続し、50石の禄高を得て家臣として仕えたと推測されます。

利右衛門は、元禄15年12月15日（1703年1月31日）、歴史に名を刻む元禄赤穂事件の渦中に巻き込まれます。赤穂藩の浪士、いわゆる赤穂義士による吉良邸への討ち入りです。この時、利右衛門は吉良義央の逃亡を支援した後、同じく吉良家家臣であった須藤与一右衛門と共に、邸宅の台所で赤穂浪士たちと激闘を繰り広げました。

利右衛門は宝蔵院流槍術の使い手として知られており、その技量を駆使して赤穂義士たちを翻弄しました。しかし、相手は数において圧倒的に優勢であり、さらに鎖帷子という防具を着用していたため、利右衛門は致命傷を与えることができませんでした。激しい攻防の末、ついに堀部武庸の刀の刀背で頭を殴打され、卒倒。その後、赤穂浪士たちによって殺害され、首を斬り落とされたのです。

興味深いことに、幕府による検死において、利右衛門と須藤与一右衛門の奮戦ぶりは高く評価されたと伝えられています。彼らは最後まで主君である吉良義央のために戦い抜いたのです。享年60歳。利右衛門の墓は、愛知県吉良町大字吉田西福寺にあります。法名は、一峰暁颯信士です。

赤穂事件における利右衛門の役割と最期

利右衛門は、赤穂事件において、吉良義央の逃亡を助けた後、最後まで抵抗し戦死したと記録されています。上杉氏の『大河内文書』には、台所での戦闘の様子が克明に記されており、彼の勇猛果敢な姿が偲ばれます。宝蔵院流槍術の熟練者であった利右衛門は、数で勝る敵に対して、優れた技量で立ち向かいましたが、圧倒的な数の差と敵の防具の前に力尽きました。

彼の最期は、義に生きた武士の悲劇として、そして赤穂事件という歴史的大事件の一端として、後世に語り継がれることでしょう。50石という禄高から考えると、それほど高い地位にあったわけではないにもかかわらず、主君への忠義を貫き、命を賭して戦った彼の生き様は、現代においても学ぶべき点が多くあります。

史料と解釈

本記事の内容は、主に『大河内文書』などの史料に基づいて記述されています。しかしながら、当時の記録には不確実な点や解釈の余地がある部分も存在します。そのため、本記事の内容は、史料に基づいた推測を含む可能性があることをご理解ください。今後の研究によって、新たな知見が得られる可能性も十分にありえます。

利右衛門の生涯と最期は、江戸時代の武士の生き様、忠義、そして元禄赤穂事件の複雑さを理解する上で重要な手がかりとなります。彼の勇猛な姿は、歴史の闇に埋もれることなく、後世へと伝えられていくべきでしょう。

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