鳥居坂

鳥居坂：歴史と文化が息づく麻布の坂道

東京都港区麻布にある鳥居坂は、六本木五丁目から麻布十番方面へと下る坂道です。フィリピン大使館や東洋英和女学院といったランドマークが点在し、歴史と文化が交錯するエリアを形成しています。

周辺の施設

六本木ロアビルから続く通り沿いには、フィリピン大使館、港区役所麻布支所、東洋英和女学院が並びます。さらに坂を下ると、東洋英和女学院小学部、ビーインググループ本社、六本木ミュージアム（旧スヌーピーミュージアム東京）、国際文化会館（旧岩崎小弥太邸）、シンガポール大使館など、多様な施設が点在しています。このエリアは、明治時代末期から大正時代にかけて華族や実業家の邸宅が立ち並ぶ、優雅な地域でした。三条家の邸宅、韓国皇太子が滞在した館、実吉家、大鳥圭介の邸宅などがその一例です。

歴史的な背景

鳥居坂には、明治時代に造園家市川之雄が設計した鳥居坂御料地が置かれました。1883年には日本メソジスト教会鳥居坂教会（現日本基督教団）が設立され、翌年には東洋英和女学校が開校するなど、歴史的な出来事も多くありました。

坂名の由来

坂名の由来には諸説あります。

鳥居彦右衛門説: 江戸時代の地誌『江戸砂子』には、慶長の頃にこの地が鳥居彦右衛門に与えられたため、鳥居坂と呼ばれるようになったと記されています。寛文図によれば、この坂ができる前、一帯は「トリイ兵部」という人物の屋敷であったとされ、『府内沿革図書』にも、鳥居氏の屋敷が記載されています。
鳥居左京亮説:『新撰東京名所図会』には、坂の上に鳥居左京亮の屋敷があったことが坂名の由来とする説が紹介されています。
* 麻布氷川神社説: また、同書には、かつて坂の上に麻布氷川神社の鳥居があったことが由来とする異説も紹介されています。

多度津藩江戸屋敷の変遷

江戸時代末期まで、鳥居坂には多度津藩・京極家の江戸屋敷がありました。この屋敷では、同藩の第3代藩主である京極高文が死去しています。明治時代になると、この地は公爵・井上馨の所有となり、1887年には明治天皇夫妻を招いた天覧歌舞伎が開催されました。その後、久邇宮邸、実業家・赤星鉄馬の邸宅と所有者が変わりましたが、1923年の関東大震災で倒壊しました。その後、三菱財閥総帥・岩崎小弥太の邸宅として再建され、太平洋戦争後に国有地となり、1955年に国際文化会館として開館しました。

アイドルグループとの関わり

アイドルグループ『櫻坂46』（旧・欅坂46）は、当初『鳥居坂46』としてメンバー募集を開始していました。しかし、お披露目当日に新グループ名が発表されるという経緯があります。グループ名に坂の名前が使われ、アイドルファンにも認知されています。

まとめ

鳥居坂は、江戸時代から現代に至るまで、その姿を変えながらも歴史と文化が色濃く残る場所です。閑静な住宅街でありながら、大使館や文化施設が点在し、多様な顔を持つ魅力的な坂道です。この坂を歩けば、過去の面影を感じながら、現代の東京の魅力を再発見することができるでしょう。

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