鳥居峠 (長野県)

鳥居峠の歴史と魅力

鳥居峠は、長野県の塩尻市奈良井と木曽郡木祖村藪原を結ぶ、標高1,197mの峠です。峠道は古くから交通の要所であり、歴史と文化が色濃く残る場所として知られています。

古代から中世へ

713年、東山道の神坂峠が危険であったため、新たな官道として「岐蘇（吉蘇）木曽路」が開削されました。鳥居峠は、かつて「県坂」と呼ばれており、木曽谷が信濃国に編入される前は、奈良井川と木曽川の中央分水嶺が国境でした。中世には「ならい坂」「やぶはら坂」とも呼ばれ、美濃国と信濃国の国境として、戦が繰り返された場所でもあります。

松尾芭蕉も訪れた峠

江戸時代の俳人、松尾芭蕉もこの峠を二度訪れ、「木曽の栃浮き世の人の土産かな」、「雲雀よりうえにさすらふ嶺かな」という句を詠んでいます。また、法眼護物の句碑も残されており、峠の歴史と文化を感じることができます。

義仲伝説と栃の木

鳥居峠には、源義仲（木曽義仲）の伝説も残っています。平安時代後期、義仲は平家追討のため、この峠で出陣の祈りを捧げたと言われています。また、「子生みの栃」として知られる大きな栃の木群落があり、訪れる人々の心を癒やしています。

戦国時代の合戦

鳥居峠は、戦国時代には武田氏と木曽氏による激戦地となりました。1549年には武田晴信（後の武田信玄）の軍勢と木曽義康の軍が衝突し、1555年には武田軍が再び攻め込み、木曽軍は敗走しました。1582年には、武田勝頼が木曽を攻めますが、木曽義昌の計略により武田軍は敗退しました。この戦いが、武田氏滅亡の一因になったとも言われています。これらの戦いで命を落とした武田方の兵士を埋葬したとされる「葬沢」という場所も残っています。

現代の交通路

鳥居峠は、現在では複数の交通路が整備されています。旧中山道を整備した信濃路自然歩道や、明治時代に開通した明治新道は、ハイキングやドライブを楽しむことができます。また、国道19号の旧道である鳥居隧道や、現道である新鳥居トンネルも、峠を越えるための重要なルートとなっています。

峠の前後

峠の東側には、かつて宿場町として栄えた奈良井宿があります。重要伝統的建造物群保存地区に指定されており、江戸時代の面影を残す街並みを散策できます。西側には、尾張藩の鷹匠役所跡や藪原神社などがあります。奈良井宿から藪原宿までは、旧街道を歩いて約3時間半の道のりです。道中には、古戦場跡や休憩所、展望スポットなどがあり、歴史と自然を満喫できます。

まとめ

鳥居峠は、歴史、文化、自然が豊かに残る場所です。古くからの交通の要所であり、多くの戦いの舞台にもなりました。現在は、ハイキングやドライブを楽しむことができ、多くの人々を魅了しています。ぜひ一度、訪れてみてはいかがでしょうか。

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