鳥居忠春

鳥居忠春について

鳥居忠春（とりい ただはる）は、江戸時代初期を生きた大名で、信濃高遠藩の初代藩主です。彼の生涯は、大名家としての栄華と彼自身の暴君としての側面を併せ持つものとされています。

生涯の概略

寛永元年（1624年）、鳥居忠春は出羽山形藩主・鳥居忠政の三男として生まれました。彼は寛永13年（1636年）に、異母兄である忠恒が嗣子を残さずに亡くなったことにより、家督を継ぐことになりました。しかし、忠春は当初、尾羽の改易を受けることになります。祖父の鳥居元忠の功績が評価され、再度信濃高遠藩に3万2000石の所領が与えられました。

忠春は初めの頃は良い治世を行っていたとされていますが、次第にその治世は悪化し、重臣に対しても残虐な行為に手を染めるようになりました。自らに反対する重臣7名を斬首し、暴君と化していく様子は恐怖の対象となりました。特に、承応3年（1654年）には尾張藩木曾領で百姓の逃散が起こり、これは忠春の支配の悪化を象徴しています。

暴政の実態

忠春は兄の時代に失った大量の所領を取り戻すことを目指し、積極的に幕府の普請事業に従事しました。彼は増上寺の警備、江戸城の石垣修理、朝鮮通信使の接待などの重要な任務に関わる一方で、その負担は藩の財政に大きな影響を与えました。藩の財政が圧迫される中、農民たちは生き延びるために藩を離れ、土地は次第に荒廃していきました。

また、忠春自身も豪奢な遊びに興じ、上伊那郷の茶屋で贅沢な生活を送る一方で、藩民には重い課税を強いる状況が続きました。お茶屋へ行く際には、村民に出迎えさせ、献上物を強要するなど、自己中心的な振る舞いが目立ちました。従者たちも豪華な食事を求め、藩の資源を浪費する結果となりました。

最期と家督

忠春は寛文3年（1663年）7月に大坂城山里丸の加番中、侍医の松谷寿覚に襲われました。松谷は忠春の権力を忌み嫌い、後に狂気による行動と見なされました。忠春はその後の傷が原因で同年8月に亡くなりました。享年40歳という若さでした。忠春の死後、家督は長男の忠則が引き継ぎました。

家族と系譜

忠春の父は鳥居忠政、母は内藤家の側室で、彼には複数の子供がいました。特に、長男の忠則は忠春の後を継いで藩主となりました。また、数代にわたり忠春の血を引く親族が所領を継承し、高遠藩の歴史にも影響を与えています。

忠春の生涯は、初めは成功を収めた大名として知られていましたが、その後の暴政と悲劇的な終焉により、複雑な評価を受けることとなりました。

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