鳥居清忠

鳥居 清忠について

鳥居 清忠（とりい きよただ）は、江戸時代に活躍した浮世絵師で、その生没年は不詳ですが、彼の作品は今なお多くの人々に愛されています。彼は主に役者絵や浮絵、さらに肉筆画などを手がけ、多彩な技法と独自の表現力を持っていました。

来歴

清忠は鳥居清信の弟子であるとされ、江戸の米沢町（現在の東日本橋二丁目）を拠点に活動していました。彼の作画活動は享保から寛延にかけて行われ、そのスタイルは当時の江戸の文化や流行を反映しています。特に、紅絵や漆絵を用いた精緻な役者絵が彼の代表作の一つであり、この時期の役者絵は非常に人気を集めました。清忠の作品は、享保3年（1718年）から寛保4年（1744年）にかけて制作されたものが多く確認されています。

作品の特徴

清忠の作品は、単色から色彩豊かなものまで多様であり、特に細版漆絵や浮絵を多く手がけました。彼の技術は非常に高度で、細部まで丁寧に描写されており、観る者に強い印象を与えます。

代表作

以下に、彼の代表的な作品をいくつか紹介します。

1. 二代目市川団十郎と初代佐野川万菊 - 細版漆絵で、ジェノバ東洋美術館に所蔵されています。俳優たちの表情や姿勢が生き生きと描かれ、その鮮やかな色合いは見る者に驚きを与えます。

2. 傾城三国志 - 細版漆絵の一つで、物語の中の美しい女性たちが描かれています。彼の女性像は特に魅力的で、多くのファンに親しまれています。

3. 吉原大門口之図 - 浮絵として制作されたこの作品は、当時の繁華街を背景に人物が描かれており、風俗が感じられる一枚です。

4. 草紙をもつ立美人図 - 紙本着色で、出光美術館に所蔵されています。この作品は、特に清忠のスタイルを象徴する美人画であり、繊細な線描と豊かな色彩が特徴的です。

5. 虫籠をもつ美人図 - 肉筆画で、奈良県立美術館に所蔵されており、女性の優美さが非常に良く表現されています。

6. 忠臣蔵七段目謀酔之段 - 紙本着色の作品で、神戸市立博物館に所蔵され、特にこの作品では物語性が強調されています。

鳥居清忠の作品は、江戸時代の浮世絵の一翼を担っており、役者絵における彼の技術や美的センスは、後の浮世絵師たちにも影響を与えました。

参考文献

• - 吉田暎二 『浮世絵事典（定本）』（上巻） 画文堂、1974年
• - 出光美術館編 『出光美術館蔵品図録 肉筆浮世絵』 平凡社、1988年
• - 武藤純子 『初期浮世絵と歌舞伎 役者絵に注目して』 笠間書院、2005年

結論

鳥居清忠の作品は、彼の技術と当時の文化に深く根ざしたものです。彼の浮世絵は、今もなお多くの美術愛好者によって評価され、研究されています。

もう一度検索