鳥居薬品

鳥居薬品株式会社（Torii Pharmaceutical Co., Ltd.）

鳥居薬品株式会社は、日本の主要な製薬メーカーの一つであり、東京都中央区に本社を構えています。主に腎・透析領域、皮膚・アレルゲン領域といった特定分野の医薬品開発、製造、販売に注力しています。

沿革

同社の歴史は古く、1872年に鳥居徳兵衛が横浜市境町で開業した洋薬輸入商「植野屋」にその源流を見ることができます。組織としての形を整えたのは1921年11月1日で、「株式会社鳥居商店」が設立されました。現在の社名「鳥居薬品株式会社」となったのは、1949年5月に鳥居製薬株式会社を吸収合併した際です。

株式市場への登場は1963年6月の店頭市場への登録に始まり、その後1993年10月には東京証券取引所第二部に上場、1995年9月には第一部へ指定替えを果たしました。

資本関係の変遷も特徴的です。1983年10月にはメルク・アンド・カンパニーからの第三者割当増資を受け入れ、一時的に同社の子会社となりました。しかし、1988年5月にはメルクが保有する全株式をアサヒビール株式会社に売却したため、親会社がアサヒビールへと変更されました。さらに1998年12月には、日本たばこ産業株式会社（JT）が実施した株式公開買付けに応じて、アサヒビールが所有する全株式を売却し製薬事業から撤退したことにより、鳥居薬品はJTの子会社となりました。

JTグループ入り後、事業体制の見直しが進み、1999年10月には新薬の研究開発はJTが担当し、鳥居薬品は医薬品の製造・販売に特化するという現在の協力体制が確立されました。近年では事業ポートフォリオの再編も積極的に行われており、2019年から2020年にかけて複数の製品の製造販売承認や販売権を他社へ承継しています。また、生産体制についても大きな転換があり、2019年9月に研究所を閉鎖した後、2020年7月には唯一の製造拠点であった佐倉工場を岩城製薬株式会社に譲渡し、医薬品の製造機能を完全に外部委託する形式へと移行しました。

過去の事例として、2003年3月にはタバコアレルギーを検査する試薬の製造および販売を中止しています。また、2020年3月には血圧降下薬の価格設定に関して独占禁止法に違反したとして、公正取引委員会より課徴金の納付命令を受けています。

事業所

鳥居薬品の本社は東京都中央区に置かれています。国内各地には、北海道東北、関東信越、南首都圏、中部、関西、中四国、九州の7つの支社を配置し、営業活動を行っています。製品の物流については、東日本（埼玉県八潮市）と西日本（大阪府茨木市）の二か所の物流センターを通じて全国に供給しています。

主な製品

同社は特定の治療領域に強みを持つ製品を提供しています。

腎・透析領域: 高リン血症治療剤「リオナ錠」、経口掻痒症改善剤「レミッチカプセル」、高カリウム血症改善剤「ケイキサレート」などがあります。
皮膚・アレルゲン領域: 外用副腎皮質ホルモン剤である「アンテベート」や「ロコイド」、尋常性乾癬治療剤「ドボネックス軟膏」といった皮膚科領域の薬剤に加え、アレルギー疾患の治療薬も重要な柱です。特に、スギ花粉症に対する舌下免疫療法薬「シダトレン」（2014年上市）や、ダニに対する同様の免疫療法薬「ミティキュア」は注目されています。
* その他領域: 重症筋無力症や排尿障害の治療に用いられる「ウブレチド」、制吐剤の「セロトーン」なども取り扱っています。

その他の活動

企業活動の一環として、かつては科学的なテーマを扱った短編映画の企画制作にも協力していました。これらには、抗生物質の作用機序、炎症反応と細胞内のライソゾームの関係、尿酸代謝と痛風の発症メカニズムといった、同社の事業に関連する専門的な内容を一般向けに解説する試みが見られます。

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