鳥屋野 (新潟市)

鳥屋野（とやの）

新潟県新潟市中央区に位置する町字であり、一丁目から四丁目までと大字鳥屋野が存在します。郵便番号は950-0951です。この地域は信濃川の下流、右岸側の自然堤防という地理的な特徴を持っています。行政地名としては、一丁目から四丁目が住居表示実施済み区域であり、大字鳥屋野は未実施区域です。

この地名の起源は古く、江戸時代から1889年（明治22年）にかけて存在した鳥屋野村の区域の一部に当たります。現在の大字としての「鳥屋野」が成立したのは1889年、町名としての「鳥屋野一丁目から四丁目」は1985年（昭和60年）に誕生しました。鳥屋野は、信濃川沿いの肥沃な土地を利用した農業地域として古くから開けていたと考えられますが、正確な開発年代は不明です。

鳥屋野には、地域の歴史を物語るいくつかの伝承が残されています。例えば、807年（大同2年）に弘法大師空海が自らの爪で彫ったと伝えられる「爪彫地蔵」や、親鸞聖人がこの地を訪れて布教を行った際にまつられたとされる奇跡「逆竹」などが知られています。これらの伝承は、古来より人々の生活や信仰がこの地に深く根差していたことを示唆しています。

行政区画の変遷を見ていくと、明治時代以降、周辺の村との合併を経てその形を変えてきました。1889年（明治22年）4月1日には、近隣地域との合併により鳥屋王村の大字の一部となりました。その後、1901年（明治34年）11月1日には鳥屋王村が「鳥屋野村」と名称を改めたことで、鳥屋野村の大字となりました。さらに、1943年（昭和18年）5月3日には新潟市へ編入され、同市の大字となります。そして、新潟市が政令指定都市へ移行した2007年（平成19年）4月1日からは、中央区に属する大字・町字として現在に至ります。

かつて鳥屋野村に編入された経緯を持つ地域としては、江戸時代から1874年（明治7年）まで存在した藤巻新田があります。この新田も鳥屋野と同様に信濃川下流右岸の自然堤防上に位置しており、1874年に鳥屋野村の一部となりました。一方、近年の変化としては、鳥屋野地域の一部から新たな町字が分立する動きもありました。2015年（平成27年）7月27日には、「鳥屋野南」という町字が鳥屋野の一部から分離して成立しています。

昭和30年代後半からは、この地域で急速な宅地化が進みました。市街地の拡大に伴い、古くからの農村的な景観の中に新しい住宅地が混在する、都市近郊らしい様相を呈しています。

地域の文化面では、「鳥屋野六階節」が重要な位置を占めています。これは、地域で行われる盆踊りの際に歌い継がれてきた伝統的な民謡で、700年以上の長い歴史を持つとされています。その起源については、鎌倉時代に親鸞聖人が伝えたという説と、同じく鎌倉時代に佐渡へ配流される途中の順徳天皇がこの地に滞在した際に伝わったという二つの説が存在し、地域の誇るべき文化遺産となっています。

交通網としては、地域内を国道116号線や新潟県道1号新潟小須戸三条線といった主要な幹線道路が通っており、新潟市内の中心部や郊外、あるいは周辺自治体へのアクセスを支える役割を担っています。

鳥屋野は、北から東回り順に網川原、女池上山、愛宕、女池神明、女池、小張木、上沼、太右エ門新田、大島、美咲町といった様々な町字と隣接しており、広範な地域との関わりを持っています。

古くからの歴史や伝承、伝統文化を守りつつ、都市化の波も受けて発展してきた鳥屋野は、新潟市中央区の中でも特に変化に富んだ興味深い地域と言えるでしょう。

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