鳧舞川

鳧舞川：日高山脈から太平洋へ至る歴史と自然の物語

北海道日高振興局管内を流れる二級河川、鳧舞川（けりまいがわ）。日高山脈の支稜に源を発し、新ひだか町のピリガイ山から太平洋へと流れ下る、この川は、その豊かな自然と歴史、そしてアイヌ文化の痕跡を色濃く残しています。

地理と地形

鳧舞川は、日高山脈西斜面を縫うように蛇行しながら流れ下ります。下流域には、河岸段丘が形成され、かつての河川の活動と地形の変化を物語っています。山々から流れ出す清流は、やがて太平洋へと注ぎ込み、その水は、日高地方の豊かな生態系を支える生命線となっています。

川名の由来：アイヌ語「ケリマㇷ゚」の謎

この川のアイヌ語名は「ケリマㇷ゚（keri-ma-p）」と記されています。しかし、その意味については諸説あり、それぞれの解釈が興味深い物語を伝えています。

「履物（ケリ）・焼く・ところ」：永田方正による解釈では、かつての飢饉で食料が尽き、人々が魚皮でできた履物である「ケリ」を焼いて食べたという悲しい伝説が語られています。
「履物（ケリ）・ある・ところ」：松浦武四郎は、『東蝦夷日誌』の中で、戦乱によって籠城した際に食料が尽き、「ケリ」を食べたという説を記しています。飢饉と戦い、いずれも厳しい生存をかけた状況が想像されます。
「ヒザラガイ・ある・ところ」：松浦武四郎は別の説として、ヒザラガイ（貝の一種）に関連する地名である可能性も示唆しています。
「ハマヒルガオの根・ある・ところ」：1954年版の『北海道駅名の起源』では、近隣の駅名である本桐駅名由来の説明において、アイヌ語「ポンケリマㇷ゚（pon-kerimap）」を「子なる・ケリマㇷ゚川」と解釈し、ハマヒルガオの根に関連づける説を紹介しています。

これらの解釈は、いずれも厳しい自然環境の中で生きてきた人々の知恵と歴史を反映していると言えるでしょう。

流域と周辺環境

鳧舞川は、新ひだか町三石地区を流れ、その流域には豊かな自然が広がっています。多くの支流が合流し、多様な動植物が生息する環境を形成しています。主要な支流には、クーベツ川、ヌキベツ川、モモカリ川、ニタラチ川、高津川、咲梅川、ルベシベ川、庄内川、久遠川、サットムクシュナイ川、シュムロ排水川、シュムロ川などがあります。

関連施設と交通

鳧舞川周辺には、道の駅みついし、みついし昆布温泉 蔵三などの観光施設があります。また、北海道道234号美河三石停車場線が並走し、JR日高本線の本桐駅が河口付近にあります。さらに、歴史的な遺跡である鳧舞チャシも存在し、地域の文化遺産となっています。

主要な橋梁

鳧舞川に架かる主な橋梁として、札内橋、清瀬橋、川上橋、稲見橋、歌笛橋、南歌笛橋、本桐橋、美野和橋、そして国道235号に架かる鳧舞橋などが挙げられます。これらの橋梁は、地域住民の生活や交通の要衝として重要な役割を担っています。

まとめ

鳧舞川は、日高山脈の雄大な自然と、アイヌの人々の歴史が織りなす、北海道を代表する河川の一つです。その名前の由来に秘められた物語、そして流域の豊かな自然環境は、訪れる人々に深い感動を与えてくれるでしょう。 今後も、この地域の自然と歴史を大切に残し、未来へと繋いでいくことが重要です。

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