鳴沢熔岩樹型

鳴沢熔岩樹型は、山梨県南都留郡鳴沢村に存在する、国の特別天然記念物に指定されている貴重な自然遺産です。

熔岩樹型とは

熔岩樹型とは、溶岩流や火砕流が森林地帯を覆った際に、樹木が燃え尽きた後に残る空洞のことです。国内では富士山北麓の山梨県と浅間山北麓の群馬県の一部にしか見られない、非常に珍しい地形です。これは、溶岩流が森林を飲み込む過程で、樹木の周囲の溶岩が冷却・固化する一方で、樹木自体は燃え尽き、その跡が空洞として残った結果です。

鳴沢熔岩樹型の形成

鳴沢熔岩樹型は、平安時代初期の864年（貞観6年）に発生した富士山の貞観大噴火によって形成されました。この噴火で流れ出した大量の溶岩は、付近の森林地帯を飲み込みながら流れ下りました。噴火が収まった後、溶岩地帯には、燃え尽きた大木の幹の形をそのまま残した空洞が各所に形成されました。これが、現在見られる鳴沢熔岩樹型です。

文化財としての指定

1929年（昭和4年）に、鳴沢熔岩樹型は国の天然記念物に指定されました。その後、1952年（昭和27年）には、より重要度の高い特別天然記念物に格上げされました。天然記念物に指定されている熔岩樹型は合計12か所あり、それぞれに通し番号が付けられ、チェーンなどで囲んで保護されています。特に、第11号樹型は、1993年（平成5年）の調査で、樹林帯を流れた溶岩流の水分が蒸気化し、ガス圧が高まって爆発を起こした、世界的に珍しい溶岩スパイラクル（溶岩水蒸気噴気孔）であることが判明しました。また、この第11号樹型は、ほぼ完全な形で残っていることも確認されています。

アクセス

鳴沢熔岩樹型は、富士吉田市と本栖湖方面を結ぶ国道139号線沿いに位置しており、交通の便は非常に良いです。そのため、多くの観光客が訪れ、その自然の驚異を目の当たりにしています。

関連情報

吉田胎内樹型：同じく富士山麓にある、溶岩流によって形成された洞窟。
船津胎内樹型：富士河口湖町にある、溶岩洞窟。
富岳風穴：富士山麓に位置する、天然の風穴。
西湖蝙蝠穴およびコウモリ：西湖周辺にある、コウモリが生息する洞窟。
鳴沢氷穴：鳴沢村にある、内部が氷で覆われた洞窟。
浅間山熔岩樹型：浅間山麓に存在する熔岩樹型。

これらの場所も、富士山の噴火活動によって形成された貴重な自然遺産として、訪れる人々を魅了しています。

鳴沢熔岩樹型は、富士山の噴火が生み出した独特の地形であり、その自然の造形美と学術的価値から、多くの人々にとって重要な観光スポットであり、研究対象となっています。

参考資料

『日本の天然記念物』講談社、1995年3月20日 第1刷 pp.955-956 ISBN 4-06-180589-4

外部リンク

山梨県公式ホームページ-山梨の文化財ガイド（データベース）天然記念物

もう一度検索