鶴屋南北 (5代目)

五代目 鶴屋南北（ごだいめ つるや なんぼく）

五代目鶴屋南北は、寛政8年（1796年）に生まれ、江戸後期の歌舞伎界で重要な存在となった歌舞伎役者・作家です。本名は松本源三郎で、彼は歌舞伎界の伝説的な家柄に生まれ、一族は多くの芸術家を輩出してきました。彼の俳名は「可祐」で、屋号は「鶴屋」、紋は「丸に大の字」として知られています。

幼少期と初期のキャリア

南北は、江戸深川八幡宮境内にあった二軒茶屋の主人、松本歳右衛門の三男として生まれました。彼の運命が大きく変わったのは、寛政12年（1800年）で、二代目勝俵蔵の養子となり、これを機に芝居の世界に足を踏み入れました。彼に関しては、四代目鶴屋南北の娘婿である勝兵助の養子であったという説も存在します。

享和2年（1802年）、南北丑右衛門の名前で江戸市村座にて「當奥州壺碑」の舞台に立ち、その際には鶴屋南北家の家紋である「丸に大の字」を用いた道化役を演じました。その後も、演者としての活動を続けましたが、文政4年（1821年）頃には狂言作者への転身を図り、改名して靏峯千助となります。

書き手としての活動

この年の5月には江戸河原崎座での『敵討櫓太鼓』や、7月には『玉藻前御園公服』といった、祖父である四代目鶴屋南北の作品に参加するようになりました。彼はその後鶴屋孫太郎という名を名乗ることになりますが、たまさかの舞台に出る際は靏峯丑左衛門の名前を使用し、四代目の作品である『絵本合法衢』に出演します。

南北は舞台活動を続けながら、祖父の名に恥じないよう努力し、著名な作品『東海道四谷怪談』や『金幣猿島郡』といった傑作の脚本執筆にも関与しました。そして、文政12年（1829年）には立作者としての地位を築いていきます。四代目南北の死後も彼の創作活動は衰えず、天保3年（1832年）に二代目姥尉輔の名跡を受け継ぎます。さらに、天保8年（1837年）には江戸中村座で五代目鶴屋南北を襲名しました。

後の活躍と評価

その後、南北は江戸や大阪の劇団で活躍し、四代目と区別するために「孫太郎南北」とも呼ばれました。南北の作品内容は、主に旧作や四代目の作品の補作、改訂に終始し、その独創性には限界があったものの、彼は幕末から明治期にかけての才能ある役者たち、三代目瀬川如皐や二代目河竹新七（後の河竹黙阿弥）を育てる重要な役割を果たしました。

生涯を通じて、彼の影響を受けた役者たちはのちに大きな功績を残すことになります。南北は55歳の時に世を去り、深川の心行寺に葬られました。彼の作品や教育に対する情熱は、今なお多くの人々に心に残るものです。彼の人生は歌舞伎文化において、非常に意義深いものといえるでしょう。

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