鶴田沼

鶴田沼：都市と自然が共存する貴重な空間

宇都宮市鶴田町に位置する鶴田沼は、地域住民からは「ひょうたん池」の愛称で親しまれるため池です。東西約70m、南北約200mの広がりを持つその姿は、中央部がくびれた独特の形状をしており、まさにひょうたんを思わせます。この特徴的な形状は、昭和21年に造られた中土手によるものです。かつては、この中土手の北側、現在の面積の約2倍もの広大な沼地が広がっていたと伝えられています。

豊かな自然と歴史

鶴田沼は、寛文年間（1661～1673年）頃に造られた歴史ある農業用ため池です。丘陵地帯の地形を生かし、水田への灌漑を目的として築造されました。江戸時代には、コイの突き漁や、冬のスケートが盛んに行われていたという記録も残っています。昭和30年代頃までは農業用のため池として利用されていましたが、周囲の都市化が進むにつれてその役割を終え、荒廃の一途を辿りました。しかし、1993年に宇都宮市とグリーントラストうつのみやとの間で保全契約が締結され、2000年には鶴田沼緑地として都市計画が決定されました。

住民参加による保全活動

鶴田沼の保全活動の中心となっているのは、「鶴田沼の自然を育てる会」です。この会は、地元住民を中心に構成され、ボランティア活動を通して鶴田沼の豊かな生態系の再生と保全に尽力しています。定期的なヨシ刈り、外来種駆除、植樹活動など、多様な活動を通じて、鶴田沼の自然環境を守り、未来へ繋いでいくための努力を続けています。その活動は高く評価され、栃木県知事賞や下野ふるさと大賞奨励賞を受賞するなど、数々の賞を受賞しています。

多様な動植物の宝庫

鶴田沼とその周辺地域は、多様な動植物が生息する豊かな自然環境を有しています。1990年代に行われた調査では、底生動物60種、魚類6種、両生類6種、爬虫類6種、昆虫類816種、鳥類85種、哺乳類8種など、多くの生物が生息していることが確認されました。特に、日本最小のトンボであるハッチョウトンボは、鶴田沼のシンボル的存在であり、宇都宮市の天然記念物にも指定されています。また、モウセンゴケなどの希少植物も確認されており、植物の種類は102科547種にも上ります。これらの貴重な動植物を保護するため、鶴田沼の自然を育てる会は、継続的なモニタリング調査や保全活動を実施しています。

教育の場としての役割

鶴田沼は、地域住民の憩いの場であると同時に、環境教育の場としての役割も担っています。近隣の小学校では、鶴田沼を教材として、自然観察や環境学習が行われています。子どもたちが自然に触れ、環境保全の大切さを学ぶことができる貴重な機会を提供しています。

アクセス

鶴田沼へは、宇都宮環状道路から細い道を入ってアクセスします。公共交通機関は不便なため、車でのアクセスが便利です。駐車場が完備されているので、安心して訪れることができます。

まとめ

鶴田沼は、都市化が進む中で貴重な自然環境を残すため池です。地域住民の熱意と努力によって守られてきたこの場所は、自然と人との共存、そして環境保全の大切さを教えてくれる場所です。訪れる際には、この貴重な自然を守り続けるために、マナーを守って散策しましょう。

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