鶴見臨港鉄道シム110形貨車

鶴見臨港鉄道シム110形貨車について

鶴見臨港鉄道シム110形貨車は、1937年7月に東京の汽車製造支店で製造された特異な低床落し込み式大物車です。1両だけが生産されたこの車両は、主に変流機などの電気製品を輸送する役割を果たしました。この貨車は、15トンの荷物を積むことができ、特に背の高い貨物の運搬を目的として設計された点が特徴です。

製造と所有

シム110形は、当初鶴見臨港鉄道の車籍で運用されていましたが、1943年にこの鉄道が戦時買収され、鉄道省に編入されました。その後、名前をシム20形に変更され、日本国有鉄道の一部として利用されるようになりました。この貨車は、芝浦製作所（現在の東芝）が所有しており、新芝浦駅に常備されていました。

構造とデザイン

一般的に、大物車両は多数の車軸を持ち、荷重を分散させる設計が採用されています。しかし、シム110形は二軸車という珍しい構造を持ち、車軸間に位置する台枠が低く折り曲げられた低床式です。そのため、低床部分には中央に直径1500mm、1100mmの穴が開けられており、この部分に特に高い貨物を落とし込んで輸送することが可能でした。これにより、貨物を安全かつ効果的に運ぶことができたのです。

輸送物品と性能

シム110形は、特に変流機などの電気製品の運搬を主な目的とし、その設計により安定した運搬を実現しました。全長は8000mmで、車体の長さは7200mm、軸距は4200mmに設定されており、低床部の高さは600mmです。これらの寸法は、貨物の特性に応じて最適化されており、設計における工夫が見て取れます。

運行と廃車

1968年のダイヤ改正によって、シム110形は75km/hの運行が不適合とされ、65km/hの制限が設けられました。最終的に、1977年4月7日に廃車となり、その歴史に幕を下ろしました。短い運用期間でしたが、ユニークなデザインと機能によって、多くの鉄道ファンや貨物輸送に携わった人々の記憶に残る存在となっています。

参考文献

• - 吉岡心平『大物車のすべて 下』ネコ・パブリッシング（RM LIBRARY 93）、2007年。
• - 貨車技術発達史編纂委員会 編『日本の貨車 -技術発達史-』日本鉄道車輌工業会、2009年。

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