鷲尾順敬

鷲尾順敬（わしお じゅんきょう）は、慶応4年3月18日（1868年4月10日）に生まれ、昭和16年（1941年）1月13日に没した、日本の仏教史学者です。摂津国（現在の大阪府）出身で、東洋大学を卒業後、曹洞宗大学林（後の駒澤大学）、そして再び東洋大学で教鞭を執りました。

学術活動

明治25年（1892年）には、境野黄洋、村上専精と共に、仏教研究団体である「溯源窟（そげんくつ）」を設立し、機関誌『仏教史林』を刊行しました。この活動は、当時の仏教研究を大きく進展させる原動力となりました。

鷲尾の研究は、日本仏教史全般に及び、特に禅宗史や各宗派の歴史、仏教思想と社会の関係など多岐にわたります。実証的な研究を重んじ、史料を丁寧に読み解くことで、仏教史の新たな解釈を提示しました。また、仏教に関する幅広いテーマで著作を発表し、その研究成果を広く社会に伝えました。

主な著書と編纂

鷲尾は、数多くの著書を執筆しました。主な著書には、『日本仏教史の研究』、『禅宗史要』、『日本仏家人名辞書』、『鎌倉武士と禅』などがあります。これらの著作は、仏教史研究における重要な文献として、現在でも参照されています。

また、編纂・校訂にも力を入れました。『近世高僧年表』、『国文東方仏教叢書』、『明治維新神仏分離史料』など、貴重な史料をまとめた編纂物は、後世の研究者にとって欠かせない資料となっています。さらに、『太平記 西源院本』、『弘法大師伝 絵入 弘法大師行状記』、『日蓮上人伝 絵入 註画讃』など、古典の校訂にも取り組み、古典文献の価値を再発見することにも貢献しました。

以下に主な著書、編纂・校訂をまとめます。

主な著書

『日本仏教史の研究』
『仏教史林』
『禅宗史要』鴻盟社 1902
『日本仏家人名辞書』光融館 1903
『鎌倉武士と禅』日本学術普及会 1916
『日本仏教の大勢と興教大師』豊山派宗務所教学部編 新興社 1920
『仏教と国民思想』国史講習会 1922
『仏教信仰実話全集』第14巻 婦人篇 第20巻 皇室篇 大東出版社 1930-1932
『日本宗教者列伝』東方書院 1935
『皇室と仏教』大東出版社 1937
『日本佛教文化史研究』冨山房 1938
『藍山全集』第1巻 (日本禅宗史の研究)』教典出版 1945
『日本禅宗史の研究』金尾文淵堂 1947

主な編纂・共著・校訂

『近世高僧年表』編 仏教学会 1900
『玉鳳煥采』編 妙心寺 1910
『国文東方仏教叢書』 全10巻 国文東方仏教叢書刊行会 1925-1926
『明治維新神仏分離史料』村上専精、辻善之助共編 東方書院 1928
『史劇親鸞聖人』草案 竹柴金作脚色 大鳳閣書房 1929
『仏教風俗灌仏会』第1編 山喜房 1929
『日本思想闘諍史料』全10巻 東方書院 1930
『建撕記』永福面山訂補 校訂 東方書院 1931
『弘法大師伝 絵入 弘法大師行状記』校訂 東方書院 1931
『国文東方仏教叢書』第2輯 全9巻 東方書院 1927-1931
『三世の光 釈尊八相の図』校訂 東方書院 1931
『日蓮上人伝 絵入 註画讃』校訂 東方書院 1931
『本願寺聖人親鸞伝絵・蓮如上人御一生記絵抄』校訂 東方書院 1931
『日本仏教図像選』東方書院 1933
『写経実習帖』編修 大日本写経会 1935
* 『太平記 西源院本』校訂 西源院本太平記刊行会 1936


鷲尾順敬は、仏教史研究における先駆者の一人として、その功績は高く評価されています。彼の残した著作や編纂物は、現代の仏教研究においても重要な資料として活用され続けています。

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