村上専精

村上専精：近代仏教研究の先駆者

村上専精（1851年5月1日 - 1929年10月31日）は、明治・大正時代に活躍した教育者・仏教史学者であり、日本の近代仏教研究の礎を築いた人物として知られています。東洋高等女学校（現・東洋女子高等学校）の創立者であり、東京帝国大学印度哲学科の初代教授、そして大谷大学の学長も務めました。

生い立ちと学問の道

村上専精は、嘉永4年に丹波国（現在の京都府）の真宗大谷派の寺院、教覚寺に生まれました。幼少の頃から父に浄土三部経を学び、漢学の才能を発揮しましたが、寺の経済状況から近郊の行雲寺に預けられ、苦学しました。18歳で姫路善教寺の私塾に入り、仏教や漢学に加え、キリスト教にも触れました。その後、越後無為信寺で唯識を学び、愛知県万福寺を経て京都東本願寺の高倉学寮に入りますが、紛争により退寮。愛知県入覚寺の養子となり村上姓に改めました。

教育者としての足跡

1880年、再び京都に戻り東本願寺教師教校に入学。真宗大学寮の教員として教鞭を執り、1884年からは越中教校の校長を務めました。1887年には、東京の曹洞宗大学林（現・駒澤大学）に招聘され講師に就任。井上円了が設立した哲学館（現・東洋大学）でも講師を兼任し、西洋哲学を学びました。1888年、東京帝国大学文科大学のインド哲学講師となり、1905年には女子教育の必要性を感じ、東洋高等女学校を創設。1917年には、東京帝国大学印度哲学科の初代教授に就任しました。1926年から1928年まで大谷大学学長を務め、教育者として多岐にわたる貢献をしました。

研究内容と業績

村上専精は、近代仏教研究を推進するための土壌づくりに尽力しました。1894年には、鷲尾順敬・境野黄洋らとともに雑誌『仏教史林』を創刊し、仏教研究の発展に貢献しました。また、史料編纂にも熱心であり、1897年には『大日本仏教史』を刊行、1926年には『明治維新神仏分離史料』を編纂・刊行し、近代的な仏教史研究の道を開きました。

大乗非仏説

1901年、長年の仏教思想研究の成果として『仏教統一論』を著し、大乗非仏説を提唱しました。この説は仏教界に大きな反響を呼び、所属する真宗大谷派から一時離れる事態となりましたが、後に復帰。南条文雄・井上円了・清沢満之ら幅広い分野の人々と交流し、近代的な仏教研究と教育体制の充実に尽力しました。

家族と晩年

父の広崎宗鎧も僧侶であり、教育熱心な人物でした。村上専精は1929年10月31日に亡くなり、雑司ヶ谷霊園に埋葬されました。

著作

『仏教統一論』
『大日本仏教史』
『明治維新神仏分離史料』(編纂)

参考文献

末木文美士『明治思想家論』（トランスビュー、2004年）
* クラウタウ、オリオン『近代日本思想としての仏教史学』（法蔵館、2012年）

村上専精は、日本の近代仏教研究の黎明期において、教育者として、研究者として、多大な足跡を残しました。彼の功績は、現代の仏教研究にも大きな影響を与え続けています。

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