鷺と雪

『鷺と雪』

『鷺と雪』は、北村薫による日本の短編推理小説で、同名の短編小説集の表題作となっています。この作品は、人気の「ベッキーさん」シリーズの最終作であり、直木三十五賞を受賞したことでも知られています。前作『玻璃の天』がノミネートされた際には受賞には至らなかったものの、6度目のノミネートでの受賞となり、その実力を証明しました。また、本作は「本格ミステリ・ベスト10 2010」で第6位、「週刊文春ミステリーベスト10」で第3位にランクインしたことでも評価されています。

登場人物

1. 別宮みつ子 - 英子のお抱え運転手であり、知識が豊富で銃の扱いも得意。
2. 花村英子 - 恵まれた環境で育ったお嬢様。

収録作品

不在の父

『オール読物』2008年1月号に掲載。
物語は子爵・滝沢吉広を巡るミステリーです。彼と似た容姿を持つ浮浪者が目撃され、その背後に広がる家族の秘密や失踪事件が描かれます。英子と友達が子爵を訪ねることで、過去の影が浮かび上がります。この話は実際の失踪事件からインスパイアを受けて作られています。

獅子と地下鉄

『オール読物』2008年6月号に収録されています。
英子は叔母の家で、中学受験に関する話題で盛り上がります。そこでのエピソードは、思わぬ出来事—息子が夜中に補導され日記に「ライオン」「浅草」「上野」と書かれていることに起因し、家族の不安と疑念が交錯します。

鷺と雪

『オール読物』2008年12月号に登場。
英子が観た能楽の「鷺」から始まるこの物語は、謎めいた出来事へと発展します。英子は銀座の能面展覧会で友人が失神する場面に遭遇し、その事をきっかけに、友人の婚約者に関する不思議な写真がきっかけで起こる心の葛藤を描いています。彼女の心の中で生じる不安と謎解きの旅は、時代背景とも重なり、切なさと共に感情を呼び起こします。

時代背景

本作は、1920年代から30年代にかけての日本を舞台にしており、社会情勢や風俗を巧みに織り交ぜながら、登場人物たちの心情を深く掘り下げています。特に、従来の価値観と現代の波により揺れ動く人間模様がリアルに描写されており、読者はその中で共感を覚えることでしょう。

結末

『鷺と雪』の物語の結末は、英子と若月が互いに時代の波に流されながらも、個々の選択をする姿を描いています。この物語は、単なるミステリーに留まらず、人間ドラマとしても楽しめる作品です。

このように、『鷺と雪』は筋書きが多層的で、読者に思考を促す要素が豊かに盛り込まれています。短編小説集として読みやすく、かつ奥深いテーマを持つ本作は、多くの読者に愛されること間違いありません。

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