鹿島御子神社

鹿島御子神社

福島県南相馬市鹿島区に鎮座する鹿島御子神社は、かつて郷社とされ、平安時代の『延喜式神名帳』にも名が見える、行方郡に鎮座する延喜式内社八座の一社です。

祭神

主祭神は、天足別命（あまたりわけのみこと）です。天足別命は武甕槌神の御子神と伝わり、一説には天児屋命と同神ともされます。また、風を司る神である志那都比古命、志那都比売命も共にお祀りしています。

由緒と歴史

当社の創建は神代に始まるとされます。天足別命が奥州の邪気を平定後この地に留まり鎮座したことが起源と伝えられます。景行天皇の時代、東征中の日本武尊が武運を祈願し霊験を得たことから、軍神として武人から崇敬されるようになりました。

社殿はかつて現在地から南へ約200m離れた場所にありましたが、平城天皇の御代、大同元年（806年）に現在地へ遷されました。旧鎮座地には今も石標が残ります。往古は多くの神職を抱え神領を有し、鹿島神宮からも奉幣を受ける格式高い神社でした。

延喜5年（905年）、鹿島御子神社は軍神だけでなく火伏せや医術の神としても霊験があるとされ、多くの信仰を集めていたことから、陸奥国延喜式内社に列せられました。醍醐天皇自身も武運長久を祈願し御神体を奉納したと伝えられます（『奥相志』によれば衣冠の騎馬像）。

江戸時代、寛永13年（1635年）に相馬藩主相馬義胤が社殿修繕や神地献納を行いました。以降、明治維新まで歴代藩主から篤く崇敬されました。近代には郷社に指定され、幣帛供進使参向指定社となるなど、その重要性が認められてきました。

特殊神事「鎮火祭」

鹿島御子神社には、祭神の天足別命にまつわる伝説に由来する特殊神事「鎮火祭」が受け継がれています。伝説では、天足別命が仮宮に滞在中、賊徒に放火された際、直ちに火伏せの神事を行い猛火を鎮めたとされます。その折、鹿島大神の神使である鹿が濡れた笹で火を防いだと伝えられており、この故事が神事の起源となっています。

鎮火祭は、毎年1月14日の「火伏祭」と翌15日早朝の「天燈籠祭」で構成されます。14日の火伏祭では、若者たちが「火伏せー」と唱えながら御神水を家々にかけ、火災除けを祈願します。15日の天燈籠祭は旧社地で執り行われ、神歌や神楽が奉納され天燈籠が掲げられます。神職は旧社地からの帰路、氏子から浄水をかけられ、凍えるまま社殿に戻り、天下の罪穢れを祓い清め、一年間の火伏せと諸願成就を祈念します。

境内

境内には社殿（拝殿、幣殿、本殿）のほか、要石が鎮座します。中でも有名なのが二本の大欅、「夫婦欅」です。樹齢300年以上（神社説1000年）とされ、福島県の緑の文化財および県指定天然記念物です。

境内社には、五穀豊穣を司る雷神を祀る雷神社、足の病平癒を願う人々が靴や草履を奉納する足尾神社、土木・建築業者から崇敬される聖徳太子石祠などがあります。また、東日本大震災後の復興と原子力災害鎮静を願う絵馬が飾られた回廊も見られます。2022年の福島県沖地震では鳥居が倒壊する被害もありましたが、復旧が進んでいます。

交通

JR常磐線鹿島駅から徒歩約5分の距離にあります。

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