鹿田荘 (越中国)

鹿田荘の歴史

鹿田荘（かだのしょう）は、かつて越中国射水郡に存在した荘園で、現在の富山県高岡市南東部付近に位置していたと考えられています。その成立は天平勝宝元年（749年）に遡り、この時点で射水郡内にある29町3段100歩の土地が東大寺の墾田地として認められ、正式に東大寺領として編入されました。初期荘園の一つとして位置づけられるこの地域は、古代日本の荘園制度の一端を示す重要な存在となります。

初期の鹿田荘は、神護景雲元年（767年）の記録によれば「全佃」として知られ、経営は非常に順調であったことがわかります。「全佃」という言葉は、全ての土地がきちんと耕作されている状態を示しており、農業における活発な管理が行われていたことを意味しています。この時期の鹿田荘は、生産活動が盛んで、東大寺にとっても重要な資源を提供していたとされるでしょう。

しかし、平安時代中期に入ると状況は一変します。経営が徐々に不振を極めるようになり、鹿田荘の様子は厳しくなっていきました。例えば、長徳4年（998年）の記録には「悉（く）荒廃」との言葉が記されており、これは荘園の経営が深刻に困難な状況に陥っていることを示しています。この言葉からは、しっかり管理されていた土地が次第に荒れてしまったという事実が浮かび上がります。

さらに、寛弘2年（1005年）には、鹿田荘に対する未進地子の督促が行われたことが記録されています。地子とは、税金の一種であり、荘園の経営を行うために必要な重要な収入源でした。この督促によって、経営が困難であった鹿田荘がいかに財政的に困窮していたかがうかがえます。しかし、その後の記録には鹿田荘の名は姿を消し、詳細な事情は不明のままとなっています。

鹿田荘の歴史は、特に経営の順調さから荒廃に至るまでの変遷が興味深く、古代日本の荘園制度の発展と崩壊を象徴する一例と考えることができます。その当時の文献にも触れ、詳細な研究が進められていることから、今後も鹿田荘についての理解が深まることが期待されます。

参考文献

• - 米沢康「鹿田荘(二)」（『国史大辞典 3』（吉川弘文館、1983年） ISBN 978-4-642-00503-6）
• - 米沢康「鹿田荘(1)」（『平安時代史事典』（角川書店、1994年） ISBN 978-4-04-031700-7）

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