麁玉郡

麁玉郡（あらたまぐん）について

麁玉郡は静岡県、かつての遠江国に存在した郡です。1879年に行政区画として設立され、現在の浜松市浜名区に相当する区域がその郡域となっています。具体的には、新原、宮口、灰木、大平、堀谷、三大地、四大地などが含まれます。

歴史的背景

古くから開発が進められ、この区域の郡名は古代の文献に由来しています。特に、藤原京から出土した木簡に「荒玉評」との記録があり、国郡制施行以前から評制が存在していたことが確認されています。また、新原や宮口、根堅、内野、高根山には古墳群が存在し、これらは大化以前から人々によって活動されていたことを示しています。

また、『万葉集』にはこの郡に由来する句も収められており、特に防人であった若倭部身麻呂の詩や、郡名を示唆する「あらたまの伎倍」という表現が知られています。江戸時代にはこの地域は複数の藩の領地にまたがり、さらに旗本や寺社の領地も存在していたため、非常に複雑な状況が生じていました。

明治20年の時点において、麁玉郡には746戸、合計で3,649人の住民がいた記録があります。

近代の沿革

麁玉郡の変遷は、明治時代初頭の動乱から始まりました。明治初年の「旧高旧領取調帳」には、様々な土地支配の状況が詳細に記載されています。その中で、村内に寺社が存在する地域や、徳川幕府時代の領地変動に関わる記録が蓄積されています。具体的には、慶応2年には白河藩主が入れ替わり、翌年にはその復帰が試みられるも実施されないという出来事がありました。

その後も幕末から明治初期にかけて、領地替えや府中藩の改名、静岡藩への変更といった一連の行政改革が行われました。特に1871年の第一次府県統合や、1876年の第二次府県統合により、麁玉郡は静岡県の一部として明確に再編成されました。

1879年3月には郡区町村編制法が施行され、それに伴い麁玉郡が正式に成立しました。この際、「引佐麁玉郡役所」が設置され、引佐郡とともにその行政を担当することとなります。

明治22年には町村制が施行され、ここに存在していた5つの村が合併し、麁玉村が成立しました。しかし、明治29年4月1日には郡制の施行により、引佐郡と麁玉郡の一部、さらに敷知郡の区域が統合され、新たに引佐郡が設けられ、その結果として麁玉郡は廃止されました。

参考文献

• - 角川日本地名大辞典 藤村健二編。角川書店、1982年。
• - 旧高旧領取調帳データベース

当郡の歴史は、鈍い流れをもたらした自然環境や長い時間を経た人々の営みの結晶であり、その足跡をたどることで地域の成り立ちを感じ取ることができます。

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