麦芽乳

麦芽乳は、大麦麦芽、小麦粉、無糖練乳を混合し、乾燥させて作られる粉末状の食品です。この製品には、糖化タイプと無糖化タイプの2種類が存在します。糖化麦芽乳は、デンプンを糖に分解する酵素を含んでおり、パン製造などの食品加工分野で利用されています。一方、無糖化麦芽乳は酵素活性を持たず、主に飲料として消費されます。製品によっては、砂糖、着色料、その他の添加物が加えられることもあります。

歴史

麦芽乳の歴史は、19世紀後半のイギリスに遡ります。ロンドンの薬剤師であったジェームズ・ホーリックは、麦芽と小麦をベースにした栄養補助食品を考案しました。しかし、イギリス国内では事業の機会に恵まれず、アメリカに渡った弟のウィリアム・ホーリックと共に事業を始めることになりました。1873年、兄弟はシカゴ近郊にホーリック社を設立し、幼児向けの栄養食品の製造を開始しました。その後、乾燥ミルクの新しい製法に関する特許を取得し、製品を「Diastoid」という名前で販売しました。1887年には「malted milk（麦芽乳）」という商標を初めて使用しました。

当初、麦芽乳は幼児や病人のための栄養食として開発されましたが、その保存性と栄養価の高さから、探検家が遠征に携行する携行食としても採用されました。また、アメリカでは一般の人々の間で飲料として人気が高まりました。ジェームズはイギリスに帰国し、アメリカで製造した製品を輸入する事業を開始し、後に準男爵の称号を授与されました。麦芽乳は、ソーダファウンテンでも提供されるようになり、アイスクリームと混ぜた飲料も人気を博しました。

文化

麦芽乳は、音楽や文化にも影響を与えています。ロバート・ジョンソンのブルース曲「Malted Milk」は、エリック・クラプトンがアルバムでカバーしたことで広く知られるようになりました。この曲は、麦芽乳が当時のアメリカ社会で親しまれていたことを示唆しています。

関連項目

麦芽乳に関連する食品や飲料としては、以下のものがあります。

フレーバーミルク
ミルクセーキ
ネスクイック
ネスレ・ミロ

麦芽乳は、その栄養価と独特の風味から、長年にわたり人々に愛されてきた食品です。その歴史と多様な用途は、食品文化における興味深い一例と言えるでしょう。

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