黄体

黄体：妊娠成立を支える一時的な器官

哺乳類の卵巣において、排卵後に形成されるのが黄体です。小さな内分泌器官であり、その寿命は一時的なものです。黄体は、排卵によって卵子が放出された後の卵胞から変化して生じます。主な役割は、妊娠成立に不可欠なホルモンの分泌です。

黄体の機能とホルモン分泌

黄体の主要な機能は、ステロイドホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの分泌です。これらのホルモンは、子宮内膜の維持と発達に重要な役割を果たします。具体的には、

エストロゲン: 子宮内膜の増殖を促し、厚くします。
プロゲステロン: 子宮内膜を妊娠に適した状態に変化させ、受精卵の着床を準備します。また、子宮の収縮を抑制し、妊娠を維持する上で重要な役割を担います。

月経周期と黄体の変化

月経周期において、黄体の役割は時期によって異なります。

受精がない場合: 卵子が受精しなければ、黄体は約12日後に機能を失い、プロゲステロンの分泌が停止します。すると、子宮内膜は剥がれ落ち、吸収または排出されます。ヒトや大型類人猿では、この排出が月経として観察されます。その後、黄体は退縮し、白体という繊維状の瘢痕組織へと変化します。

受精した場合: 卵子が受精すると、ヒト絨毛性ゴナドトロピン（hCG）というホルモンが分泌されます。hCGは黄体に作用し、プロゲステロンの分泌を継続させる信号を送ります。これにより、子宮内膜は維持され、受精卵の発育に適した環境が保たれます。受精卵は、子宮内膜にしっかりと着床し、成長を続けます。

黄体と妊娠の中絶

妊娠の維持には黄体の機能が不可欠です。一方、妊娠を継続させないためには黄体の機能を抑制する必要があります。エイコサノイドの一種であるプロスタグランジンは、黄体の退行を促す作用があり、人工妊娠中絶において使用されることがあります。プロスタグランジンが黄体に作用すると、プロゲステロンの分泌が低下し、子宮内膜が剥がれ落ちることで妊娠が中断されます。

まとめ

黄体は、排卵後の卵胞から形成される一時的な内分泌器官であり、エストロゲンとプロゲステロンを分泌することで、月経周期や妊娠の成立に重要な役割を果たします。受精の有無によってその運命は異なり、受精がなければ退縮しますが、受精していれば妊娠を維持するためにプロゲステロン分泌を継続します。黄体の機能を理解することは、生殖生理の理解に不可欠です。

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