黄海道

黄海道（ファンヘド）

黄海道は、朝鮮王朝時代（李氏朝鮮）に設けられた行政区画、「朝鮮八道（チョソンパルド）」の一つとして数えられました。その名称は、当時の主要都市であった黄州（ファンジュ）と海州（ヘジュ）という二つの地名から、それぞれの頭文字をとって命名されたものです。しばしば黄海に面していることに由来すると誤解されがちですが、直接的な関係はありません。

この地域は、さらに時代を遡る高麗王朝時代には、五道両界（オドリャンゲ）と呼ばれる行政区分において「西海道（ソヘド）」と呼ばれていました。朝鮮王朝によって黄海道と改称され、李氏朝鮮末期までその体制が維持されました。

分断後の黄海道

第二次世界大戦後の朝鮮半島分断を経て、黄海道はその歴史的な領域を大きく変えました。現代の行政区分では、主に朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）の黄海北道（ファンヘプクド）と黄海南道（ファンヘナムド）の二つの道に分割され、現在の北朝鮮の主要な地域を構成しています。

一方、大韓民国（韓国）では、朝鮮戦争によって分断された朝鮮半島の北側地域に対する行政区分として「以北五道（イブクオド）」を定めており、その一つとして「黄海道」の名称を分割されることなく維持しています。これは、韓国政府が北朝鮮による領域分割を正式には承認していない姿勢を示しています。

また、かつて黄海道の行政区域に含まれていた一部の島嶼、特に白翎島（ペンニョンド）や延坪島（ヨンピョンド）などは、朝鮮戦争以降、大韓民国が実効支配を続けています。これらの島々は、現在は韓国の仁川広域市（インチョンこういきし）の行政区分として編入されています。

李氏朝鮮時代の地方区分

『経国大典（キョングクテジョン）』に定められた李氏朝鮮時代の黄海道内の地方区分は、長官の等級や役割に応じて細かく分けられていました。主な行政単位は以下の通りです。

• - 牧（モク）：長官は牧使（モクサ）。

- 黄州牧（ファンジュモク）
- 海州牧（ヘジュモク）

• - 都護府（トホブ）：長官は都護府使（トホブサ）。

- 延安都護府（ヨナンとほぶ）
- 平山都護府（ピョンサンとほぶ）
- 瑞興都護府（ソフンとほぶ）
- 豊川都護府（プンチョンとほぶ）

• - 郡（クン）：長官は郡守（クンス）。

- 谷山郡（コクサンぐん）
- 鳳山郡（ポンサンぐん）
- 安岳郡（アナクぐん）
- 載寧郡（チェリョンぐん）
- 遂安郡（スアンぐん）
- 白川郡（ペクチョンぐん）
- 信川郡（シンチョンぐん）

• - 県（ヒョン）：長官は県令（ヒョンニョン）。

- 新渓県（シンゲひょん）
- 甕津県（オンジンひょん）
- 文化県（ムナひょん）
- 牛峰県（ウボンひょん）

• - 県（ヒョン）：長官は県監（ヒョンガム）。

- 長連県（チャンニョンひょん）
- 松禾県（ソンファひょん）
- 長淵県（チャンヨンひょん）
- 康翎県（カンニョンひょん）
- 殷栗県（ウンニュルひょん）
- 江陰県（カンウムひょん）
- 兎山県（トサンひょん）

これらの区分を通じて、当時の黄海道の統治体制が詳細に把握できます。

黄海道ゆかりの人物

歴史上の多くの著名人が黄海道にゆかりがあります。代表的な人物としては、以下の方々が挙げられます。

• - 安重根（アン・ジュングン）：朝鮮独立運動家
• - 金綺秀（キム・ギス）：政治家
• - 金九（キム・グ）：朝鮮独立運動家、大韓民国臨時政府主席
• - 李承晩（イ・スンマン）：政治家、大韓民国初代大統領
• - 周時経（チュ・シギョン）：近代朝鮮語学者

関連事項

黄海道に関連する事項や歴史的な変遷、現代の区分については、以下の項目も参照してください。

• - 二十三府制（李氏朝鮮末期に短期間施行された地方行政制度）
• - 黄海道 (日本統治時代)（日本統治時代の行政区分としての黄海道）
• - 朝鮮民主主義人民共和国の地方行政区画

- 黄海北道
- 黄海南道

• - 大韓民国の地方行政区画

- 仁川広域市

黄海道は、朝鮮半島史において重要な位置を占める地域であり、その歴史、文化、そして現代における分断の状況は、朝鮮半島の複雑な歴史を理解する上で欠かせない要素となっています。

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