黄金を抱いて翔べ

『黄金を抱いて翔べ』

高村薫によるサスペンス小説『黄金を抱いて翔べ』は、1990年12月に新潮社より刊行され、彼のデビュー作として第3回日本推理サスペンス大賞も受賞した記念すべき作品です。この小説は、同年10月号の『小説新潮』に掲載された後、たちまち多くの読者に受け入れられました。

概要

小説は、地下に240億円という巨額の金塊を隠し持つ大阪に本店を置くメガバンクを舞台にしています。物語は、金塊を狙う6人の男たちの奮闘が描かれながら、それぞれの過去が徐々に明らかになっていく構成となっています。これにより、単なる強盗計画の裏に隠れた人間ドラマが展開され、サスペンス感を高めています。

あらすじ

この物語は、大阪の街での生き様を体現した6人の男たちが、なんと6トンもの金塊を強奪しようとする計画を立てるところから始まります。彼らはそれぞれが抱える秘密や過去を持ち寄り、無謀と思える計画に挑んでいくのです。なぜ彼らはこの危険を冒すのでしょうか？それは、彼らがそれぞれの人生において切実な理由を抱えているからです。

登場人物

• - 幸田弘之（コウダ ヒロユキ）：物語の中心人物で、自ら「人のいない土地」を求める29歳。
• - 北川浩二（キタガワ コウジ）：幸田の大学時代の友人であり、襲撃計画を主導するリーダー的存在の30歳。
• - 北川春樹（キタガワ ハルキ）：浩二の弟で、高校を中退した若者。
• - 楚要煥（モモ）：元北朝鮮のスパイで、幸田との縁で仲間に加わる。
• - 野田（ノダ）：コンピュータ技術者で、北川と知り合い。
• - 岸口順三（キシグチ ジュンゾウ）：元神父で、経験を買われて計画に参加する。

中でも、野田のみが関西育ちで、関西弁を使う人物です。各キャラクターの過去や性格が、物語を通じて巧みに描写されており、読者に深い興味を持たせます。

その他のキャラクター

• - 北川圭子：浩二の妻。
• - 山岸：左翼系政治団体「青銅社」のメンバー。
• - サク：暴走族の総長で、春樹に恨みを持っています。
• - 末永：公安と北朝鮮の二重スパイ。

映画とドラマ

1991年には、日本テレビ系列によって本作がドラマ化され、さらに2012年には、その小説を基にした映画が公開されました。映画では妻夫木聡さんが幸田を演じ、人気のキャストが集まりました。映画は初日の興行で大きな成功を収め、日本アカデミー賞などの賞も受賞しました。

まとめ

『黄金を抱いて翔べ』は、サスペンスの醍醐味とともに、登場人物それぞれの内面に迫る深い描写が特徴です。金塊強奪という緊迫した舞台を背景に、人生を賭けた熱いドラマが展開されるこの作品は、サスペンス小説としての魅力を存分に発揮しています。

もう一度検索