黄長燁

黄 長燁について

黄長燁（こう・ちょうよう、ファン・ジャンヨプ）は、1923年2月7日生まれの朝鮮民主主義人民共和国の思想家、政治家です。主体思想の理論家として知られ、朝鮮労働党の国際担当書記を務めていましたが、1997年に韓国に亡命しました。彼の生涯は非常に波乱に満ちたものであり、特に金日成体制との関係や、亡命後の活動が注目されています。

生い立ち

黄長燁は咸鏡道出身とも平壌の江東郡出身とも言われる地主の家庭に生まれました。中央大学の法学部に在籍していましたが、2年次で中退し、母校で教師として働くことになりました。その後、1949年にソ連のモスクワ大学へ留学し、哲学博士号を取得しました。帰国後は金日成総合大学で教鞭を執り、1965年にその総長に就任、1970年には朝鮮労働党中央委員会の委員に選出されました。この時期、黄は金日成の側近として重要な役割を果たしました。

金日成体制との関係

黄長燁は金日成の信任を受けながらも、彼の主張と異なる意見を持っていました。特に、黄はマルクス・レーニン主義の社会発展論を支持しており、共産主義の発展には「資本・社会両主義の過渡期」を経る必要があると唱えていました。これに対して、金日成はその過渡期を不要と考え、黄を「資本・日和見両主義者」とみなしていました。しかし、金正日は黄を評価し、その影響力を認めました。

1974年、金正日は金日成が名付けた白頭峰の神格化を行う場面に立ち会い、黄はこれに疑問を感じました。この出来事は、北朝鮮の指導者の個人崇拝の確立と関連していると考えられています。黄はまた、国家への忠誠心から、他国で主体思想を広めるために積極的に活動していました。

脱北と亡命

1997年、黄長燁は日本での講演を終えた後、韓国大使館に赴き亡命を申請しました。彼はその手記の中で、祖国の体制に義憤を感じ、その変革を望んでいたと述べています。しかし、彼自身も独裁化のイデオロギー整備に関与していたため、真の動機には疑問が残ります。亡命後、彼は韓国で文筆業や評論家活動を行い、金正日政権打倒を掲げて活動しました。

亡命後の活動

亡命後、黄長燁は様々な脅迫を受けながらも、彼の主張を疑問視するような活動を続けました。彼は特に国家情報院や警察の警護を受けながら、韓国のメディアで活動しました。また、彼の家族が北朝鮮を脱出したという情報もあり、彼の影響力は国内外で広がっていました。

最後の時

2010年10月9日、黄長燁はソウルで自宅の浴室で死亡しているのが発見されました。彼の遺体はボディガードによって発見され、心臓疾患によるものとされました。彼の死後、韓国政府から無窮花章が贈られ、大田国立顕忠院に埋葬されました。この事件は、彼の長い政治的キャリアの終わりを告げるものであり、朝鮮半島の歴史における重要な出来事の一つでした。

学術的貢献

黄はまた、和田春樹などの学者との交流を持ち、北朝鮮の歴史や政治についての議論を行っていました。彼の著作物には、金正日体制に対する批判が含まれており、竹藪の研究や主体思想の再解釈に関する彼の意見が反映されています。

結論

黄長燁は、北朝鮮の政治史において、重要な役割を果たした人物であり、彼の思想や活動は今も様々な形で語り継がれています。彼の人生は、無数の矛盾や葛藤を含んでおり、韓国と北朝鮮の関係に深い影響を与えました。彼の亡命後の活動や死は、彼自身だけでなく、北朝鮮全体にとっても大きな意味を持つものでした。

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