黄驥

黄驥（こう き）は、生没年不詳の明代の官僚であり、字（あざな）を致遠（ちえん）と称しました。彼の本貫は全州清湘県にありました。

生涯

1396年（洪武29年）に、郷試に合格し、沙県（さけん）の教諭となりました。その後、永楽年間にはその才能を認められ、礼科給事中（れいかきゅうじちゅう）に抜擢されました。彼はこの役職で、三度にわたって西域への使節という重要な任務を任されました。彼の外交手腕は、当時の明朝にとって非常に重要なものでした。

1424年（永楽22年）には、黄驥は朝貢使節の随従を制限するよう進言しました。具体的には、西域からの朝貢品の中で、実需のある西域産の馬のみを受け取り、硇砂（しょうさ）、梧桐（ごどう）、岩塩などの需要の少ない品物の受け取りを拒否するよう上疏しました。この上疏は、単なる物資の受け取り制限だけでなく、当時の朝貢体制における無駄を省き、実質的な利益を追求するものでした。この上疏を見た洪熙帝（こうきてい）は、礼部尚書の呂震（ろ しん）にその文章を示し、呂震の対応を厳しく叱責しました。この一件から、黄驥の進言が皇帝に認められただけでなく、官僚の間でも一定の影響力を持っていたことが伺えます。

その後、黄驥は右通政（うつうせい）という役職に転じました。1427年（宣徳2年）には、李琦（り き）や羅汝敬（ら じょけい）とともにベトナムの後陳朝に派遣され、陳暠（ちん こう）を安南国王に封じるという重要な任務を遂行しました。この派遣は、当時のベトナム情勢における明朝の立場を示すものであり、黄驥は外交官としての役割を果たしました。1428年（宣徳3年）に帰国しましたが、その後ほどなくして死去しました。

黄驥は、その生涯において、外交官としてだけでなく、行政官としても優れた手腕を発揮しました。彼の進言は、明朝の財政運営や外交政策に影響を与え、その功績は後世にまで伝えられています。彼の著書には『黄門奏草（こうもんそうそう）』があり、彼の官僚としての活動や思想を知る上で重要な資料となっています。

参考文献

『明史』巻164 列伝第52
金鉷『広西通志』巻77

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