羅汝敬

羅汝敬（ら じょけい）は、明代に活躍した官僚であり、その生涯は栄光と挫折が交錯するものでした。1372年に吉州吉水県で生まれ、字を汝敬、号を寅庵と称しました。彼は、羅復仁の孫として、学問に励み、特に経学においては次兄の羅汝弘から教えを受けました。

1404年、羅汝敬は進士に合格し、翰林院庶吉士に任じられ、その才能を認められました。文淵閣での学問に励む中、書を音読した際に永楽帝の意にそぐわなかったことから、その日のうちに一兵卒に落とされて江南へ派遣されるという憂き目にあいました。しかし、数日後には召還され、1407年には翰林院修撰として復帰しました。その後も順調に出世を重ね、1420年には翰林院侍講に任じられ、『高廟実録』の編纂にも携わりました。

1425年、羅汝敬は時政十五事を上言したことが洪熙帝の怒りを買い、投獄されるという事態に陥りました。しかし、その後、雲南道監察御史として再び官界に復帰します。宣徳帝の時代には、皇帝が天寿山の長陵と献陵に行幸して、降将とともに狩猟を行う様子を憂い、大学士の楊士奇に皇帝を諫めるように働きかけました。

その後、羅汝敬は工部右侍郎に抜擢され、1427年にはベトナムの後陳朝へ派遣され、陳暠を安南国王に封じるという重要な任務を遂行しました。翌年、帰国しましたが、黎利が陳暠の死を報告したことを受け、再びベトナムに派遣され、黎利を安南国王に封じました。しかし、黎利が喪中であるにもかかわらず宴会を開いていることを知ると、厳しく叱責し、黎利は陳謝しました。帰国後、羅汝敬は両浙の水運を監督し、1431年には陝西の屯田を監督するなど、多岐にわたる職務をこなしました。

1434年、羅汝敬は供応を受けたことで罪に問われ、事官に左遷されました。翌年、正統帝が即位すると、大赦が出されましたが、羅汝敬は詔を勝手に解釈して復職しようとしたため、逮捕され投獄されてしまいました。しかし、陝西での功績が考慮され、死罪は免除され、一兵卒として辺境に流されることになりました。その後、再び工部右侍郎に復帰し、1436年には塞北での糧食輸送の監督を務めましたが、紅城子で敵に遭遇し、流れ矢に当たって落馬しました。

1438年、羅汝敬は病を理由に辞職し、故郷に戻りました。1439年10月、68歳でその波乱に満ちた生涯を終えました。彼は、学識と政治的手腕を持ちながらも、その性格からか、幾度となく不遇な目に遭いましたが、その度に立ち上がり、職務を全うした人物でした。羅汝敬の人生は、明代の官僚社会の厳しさを物語ると同時に、困難に屈せず自らの信念を貫いた人間の姿を示しています。

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