黎錦熙

黎錦熙について

黎錦熙（れい きんき、1890年2月2日 - 1978年3月27日）は、中国の言語学者、教育者、国語運動家として知られています。彼は、言語教育の普及と改善に尽力し、特に彼の著作『新著国語文法』を通じて中国語の文法の理解を大きく前進させました。

生涯

黎錦熙は湖南省湘潭県中路鋪鎮にて、8男3女の11人兄弟の長男として生まれました。彼の兄弟の中にも著名な人物が多く、次男の黎錦暉は流行音楽の分野で有名であり、七男の黎錦光は名曲「夜来香」の作曲家として知られています。

彼は1920年代に国語ローマ字の制度に関与し、国語教育のための『国語模範読本』を編纂しました。また、中国大辞典の編纂において重要な役割を果たしました。北平師範大学の教授として教鞭を執っていましたが、日中戦争中に大学が他の地域に移転した際には、彼も移動を余儀なくされました。

中華人民共和国が成立した後、黎錦熙は文字改革協会（後の文字改革委員会）のメンバーとして活躍しました。文化大革命の際には、彼は初め「反動学術権威」として批判の対象となりましたが、同郷の毛沢東の恩師であったことで、深刻な迫害を免れました。

主な著作

黎錦熙の代表的な著作『新著国語文法』（1924年）は、中国語の標準的な口語に関する文法書として、非常に重要な位置を占めています。この著作は、これまでの文語を対象にした文法書とは異なり、現代の口語に焦点を当てており、文法を「字 - 詞（単語）- 語 - 句（文）」の4つのレベルに分類しました。

彼は、句法（統辞論）が中国語文法において中心的な役割を果たすべきであるとし、文法要素の明確な図示を行う方法論を採用しました。具体的には、主語と述語の間には二本線、動詞と賓語の間には一本線を引くことで、文の構造を視覚的に示しました。このような図解法は、中国語特有の主述構造の理解に寄与しました。

彼が提唱した9つの品詞の分類は、文中での役割によって実体詞（名詞・代詞）、述説詞（主要動詞）、区別詞（形容詞・副詞）、関係詞（介詞・連詞）、情態詞（助詞・嘆詞）の5つに分けられ、それぞれの品詞が果たすことのできる位置も詳細に記載されました。

『新著国語文法』は、中華民国の中学校において広く使用され、また日本でも戦時中に重用された著作です。邦訳も行われ、多くの学生や学者に愛用されています。

さらに、黎錦熙は1933年に文言を対象にした『比較文法』を出版し、1934年には中華人民共和国成立前の文字改革や言文一致の運動に関する著作『国語運動史綱』を発表しました。これらの著作は中国の言語教育と文化理解において重要な寄与を果たしています。

黎錦熙の生涯と業績は、中国語の発展と教育における重要な一歩を象徴するものであり、彼の研究成果は今なお多くの人々によって評価されています。

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