黒い空

黒い空 (くろいそら)

松本清張によるこの長編推理小説は、1987年8月から1988年3月まで『週刊朝日』に連載され、1988年8月には朝日新聞社から正式に刊行されました。その後、1990年にはテレビドラマ化もされています。

あらすじ

物語は八王子の高尾街道沿いに立つ白亜の結婚宴会場、「観麓会館」を舞台に進行します。この美しい会場は、擬岩石を用いた滝壺を持ち、結婚式を挙げるカップルたちの前で白い瀑布が流れ落ちていました。しかし、この美しい景観の裏側には、次第に黒い予感が忍び寄ります。やがて、会場で起こった第一の殺人事件が事件の幕開けとなり、物語は一気に緊迫感を増していきます。

主な登場人物

• - 山内善朗: 定子の婿養子で、ヨーロッパの建築デザインを学んでいますが、経営者としてはうまくいっておらず、社員たちの嘲笑の的にもなっています。
• - 山内定子: 山内上杉家の嫡流で観麓会館の会長。自らが率いる山内コンツェルンの総帥でもあり、会館の名称は管領職に由来しています。
• - 千谷規子: 観麓会館の経理部門で働く会計係。数字の扱いが得意で、定子に見込まれて採用されました。
• - 難波為利: 御室熊野神社の禰宜で、観麓会館の祭主を務める神職です。神紋に亀甲に割菊をあしらっています。
• - 小原甚十: 日高町の農民と名乗る男で、観麓会館での話し相手を探しています。歴史に詳しく、しばしば周囲との会話に花を添えます。

エピソード

ミステリ評論家の千街晶之によると、本作は新本格ミステリーの時代において、清張がホラーや伝奇的な要素を取り入れた異色の作品であると評されています。三角関係や裏金が絡む卑近な犯罪が、ホラー的な伝奇要素と組み合わさることで、『黒い空』は清張作品の中でも独特な魅力を放つ作品に仕上がっています。

翻訳版

この作品は、イタリア語の「Il palazzo dei matrimoni」や、中国語の「黑色的天空」など、さまざまな言語に翻訳されています。

関連項目

• - 享徳の乱: 山内家と扇谷上杉家に関連する1455年から1483年まで続いた内乱。
• - 河越城の戦い: 1546年に起こった河越夜戦。この戦で勝った北条氏康の息子が八王子城を築いたと言われています。

テレビドラマ化

1990年3月24日、テレビ朝日の「土曜ワイド劇場」で放送されたドラマ「松本清張サスペンス・黒い空」は、視聴率19.1%を記録しました。キャストには藤竜也、萬田久子、赤座美代子、橋爪功などが参加し、視聴者を惹きつけました。

スタッフ

• - 脚本: 大野靖子
• - 演出: 長尾啓司
• - 音楽: 岩間南平

このように『黒い空』は、美しい背景を持ちながらも、背後に潜む恐怖を描いた作品であり、多くの読者や視聴者に衝撃を与えています。

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