享徳の乱

享徳の乱：関東を二分した28年間の内乱

享徳の乱は、室町時代中期、1455年から1483年にかけて28年間続いた内乱です。室町幕府8代将軍・足利義政の時代に、鎌倉公方・足利成氏が関東管領・上杉憲忠を暗殺したことをきっかけに、関東地方全域を巻き込む大規模な戦乱へと発展しました。

乱の背景：鎌倉府と幕府の対立

鎌倉府は、足利尊氏が設置したもので、鎌倉公方を筆頭に、関東管領が補佐する体制でした。しかし、次第に鎌倉公方は幕府と対立するようになり、関東管領との間でも不和が生じるようになります。特に、第4代鎌倉公方・足利持氏が将軍・足利義教に滅ぼされた永享の乱以降、関東地方は幕府の強い影響下に置かれました。

その後、嘉吉の乱で将軍義教が暗殺されると、関東地方の安定を求める声が高まり、持氏の子・足利成氏が鎌倉公方として擁立され、鎌倉府は再興されました。

成氏と憲忠の対立

再興された鎌倉府では、上杉憲忠が関東管領として成氏を補佐することになりましたが、成氏は、以前から対立関係にあった結城氏や里見氏を重用し、上杉氏を遠ざけるようになります。これに対し、憲忠は反発を強め、両者の対立は深刻化しました。

さらに、山内上杉家の家宰・長尾景仲や扇谷上杉家の家宰・太田資清らが成氏を攻めたことで、鎌倉公方と上杉氏との対立は決定的となりました。

乱の勃発と拡大

1455年、ついに成氏が憲忠を暗殺したことで、享徳の乱が勃発します。上杉氏は、越後守護・上杉房定らと合流して対抗し、幕府も成氏討伐を決定しました。しかし、成氏は各地で転戦を続け、本拠地を鎌倉から下総古河に移し、古河公方と称しました。

この戦乱は関東各地に広がり、利根川を境に東側を古河公方、西側を関東管領が支配する状態となり、関東地方は東西に分断されました。

堀越公方の登場

幕府は、成氏に対抗するため、足利義政の異母兄・政知を鎌倉公方として関東に派遣しましたが、政知は鎌倉に入ることができず、伊豆の堀越に拠点を置き、堀越公方と称しました。しかし、実権は幕府に握られており、関東の武士の支持を得ることはできませんでした。

長期化する戦乱

その後も、両陣営は各地で戦闘を繰り広げ、一進一退の攻防が続きました。上杉氏側では、関東管領・上杉房顕が戦死し、後を継いだ上杉顕定が、長尾景春の乱などの内紛にも悩まされました。

一方、古河公方の成氏は、幕府の改元に従わず「享徳」の年号を使い続け、幕府との対立姿勢を鮮明にしました。

和睦と乱の終結

1480年、細川政元が和睦を提議し、1483年、ついに幕府と成氏との間で和睦が成立しました。これにより、成氏が関東を引き続き統治する一方で、伊豆の支配権は政知に譲られることになりました。しかし、二人の公方が並存する状態は依然として続くことになりました。

応仁の乱への影響

享徳の乱は、28年間という長期にわたって続き、その間に応仁の乱が勃発・終結しました。享徳の乱の長期化は、将軍義政に対する不満を高め、応仁の乱の一因になったとも言われています。

また、成氏は西軍との和睦交渉も行いましたが、東軍の勝利により失敗に終わっています。この結果、幕府は関東への介入を再開できる状況ではなくなり、成氏との和睦に応じざるを得なかったと考えられています。

享徳の乱の意義

享徳の乱は、関東地方における戦国時代の幕開けを告げる戦乱として重要な意味を持っています。この戦乱によって、関東地方の武士団は独自の勢力を形成し、戦国時代へと突入していくことになります。また、室町幕府の権威失墜を象徴する出来事でもありました。

参戦武将

古河公方側
古河公方：足利成氏
結城氏：結城成朝、結城氏広、多賀谷氏家、多賀谷朝経
簗田氏：簗田持助
小山氏：小山持政、小山成長
宇都宮氏：宇都宮明綱、宇都宮正綱、宇都宮成綱
里見氏：里見義実
小田氏：小田持家、小田朝久、小田成治
上総武田氏：武田信長、武田信高
上総酒井氏：酒井定隆
岩松氏（京兆家）：岩松持国、岩松次郎、岩松成兼
下那須氏：那須資持、那須資実
成田氏：成田正等
筑波氏：筑波潤朝
下総千葉氏：馬加康胤、原胤房、原胤茂、千葉孝胤
白井長尾氏：長尾景春
高梨氏：高梨政高
村上氏：村上政清

堀越公方側
堀越公方：足利政知、渋川義鏡、上杉教朝、上杉政憲
山内上杉家：上杉房顕、上杉顕定、長尾景仲、長尾景信、長尾忠景、大石房重、大石顕重
八条上杉家：上杉持定
扇谷上杉家：上杉持朝、上杉顕房、上杉政真、上杉定正、太田道真、太田道灌、三浦時高、大森氏頼
越後上杉家：上杉房定、上杉定昌
犬懸上杉家：上杉憲秋、上杉持房、上杉教房
足利長尾氏：長尾景人、長尾定景、長尾房清、長尾景長
岩松氏（礼部家）：岩松家純、横瀬貞国、横瀬国繁、横瀬成繁
上那須氏：那須氏資、那須明資
武蔵千葉氏：千葉胤直、千葉胤宣、千葉胤賢、千葉実胤、千葉自胤
東氏：東常縁、東縁数
宇都宮氏：宇都宮等綱
本庄氏：本庄信明
今川氏：今川範忠、今川義忠
武田氏：武田信昌

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