黒印状

黒印状とは

黒印状とは、戦国時代から江戸時代にかけて、将軍、大名、旗本などの為政者が、墨を用いて印判を押して発行した公文書のことです。主に、所領の安堵や寺社領の知行など、重要な事項を伝える際に用いられました。

黒印状の歴史

戦国時代、それまで主流であった花押に代わり、印判を押印する印判状が普及しました。この流れの中で、戦国大名たちは、花押、朱印、黒印を使い分け、または併用して様々な公文書を発行していました。

黒印状の起源については、文明19年（1487年）に今川氏親が幼少のため花押を書くことが難しく、その代わりとして用いたのが始まりという説が有力です。これが、次第に他の武将や為政者にも広まっていったと考えられます。

江戸時代に入ると、黒印状は将軍家においては御内書や条目類の発給に、大名においては家臣や寺社領（黒印地）に対する知行の宛行・安堵に、そして旗本においては下知状の発給など、それぞれの立場で重要な役割を果たしました。

黒印状に対する誤解

黒印状について、よくある誤解として、「黒印状は朱印状の略式文書である」、「江戸幕府が朱印状を将軍専用として大名の使用を禁じた」というものがあります。しかし、これは事実ではありません。

例えば、将軍徳川家康・秀忠の時代には、黒印状による所領安堵が行われていました。また、徳川家光が上洛した際に発給された「留守法度」も、黒印状によって発行されています。これらの事例から、黒印状は必ずしも朱印状の略式として用いられたわけではないことがわかります。

さらに、細川家や伊達家といった大名家においても、藩主が発給した朱印状が現在まで残されています。このことから、江戸幕府が大名による朱印状の使用を禁じたという説も誤りであることがわかります。

このように、黒印状と朱印状は、それぞれ異なる役割や目的を持って使い分けられており、一方が他方の略式であるという関係性ではありませんでした。それぞれの文書が持つ意味を正しく理解することが、歴史を深く理解する上で重要となります。

まとめ

黒印状は、戦国時代から江戸時代にかけて重要な役割を果たした公文書です。花押の代替として生まれ、時代とともにその使われ方が変化しました。朱印状との関係性についても、誤解を解きながら理解することが大切です。黒印状は、当時の社会や政治状況を理解する上で欠かせない史料の一つと言えるでしょう。

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