黒岩保美

黒岩 保美: 鉄道イラストレーターの生涯

黒岩保美（1921年11月14日 - 1998年5月8日）は、日本の鉄道イラストレーター、写真家、工業デザイナーおよび編集者として知られています。東京都中央区日本橋富沢町に生まれ、彼のキャリアは国鉄（後のJR）職員として始まりました。

経歴と初期の活動

もともと国鉄での現場職員を目指していた黒岩ですが、体調に不安があったため、画家を目指すことになりました。1936年、彼は東京学生鉄道趣味連盟に参加し、鉄道に関する仲間との交流を深めました。戦時中は、軍需工場に従事した後、海軍での嘱託職を経て、連合国軍の占領下の1947年に運輸省鉄道総局の嘱託となりました。

その際、彼は連合軍専用の客車のデザインのカラーイラストを手がけ、モノ不足の中でも日本画の技術を活かしてその魅力を伝えました。1949年には運輸省から職員として採用され、車輌設計部門に配属されました。彼のデザインにより、1950年代以降の特急列車のヘッドマークやヘッドサインのほとんどが彼の手によるものでした。特に、1969年にはグリーン車のシンボルマークをデザインし、そこでの功労が認められました。

編集者としての活動と出版

黒岩はまた、鉄道友の会の会報「鉄道ファン」の編集に深く関与し、1963年には三代目編集長に就任しました。彼の編集下で、蒸気機関車専門の不定期刊行誌『SL』を創刊し、鉄道ファンからの高い評価を受けました。また、1972年の国鉄100周年に際しては『100年の国鉄車輌』の編集にも関わり、その後も様々な鉄道関連書籍を手がけました。

1977年の定年退職後は、株式会社エリエイ/プレス・アイゼンバーンに入社し、多くの鉄道写真集や画集の編集を行いました。この期間中に発表した作品には、黒岩の豊かなイラストによるものが多数あります。彼は特に外国の鉄道に関する自著や共著を持ち、その内容は多くの鉄道愛好者に影響を与えました。

作品と令和への遺産

黒岩の作品には『蒸気機関車時代』や『鉄路の名優たち』などの画集があり、さらに鉄道に関する多くの写真集も出版されています。また、記念切手のデザインにも携わり、彼のイラストは国内外で広く使用されました。

1997年には鉄道友の会シルバー賞を受賞し、彼の功績は正当に評価されました。しかし、1998年5月、急性骨髄性白血病により惜しくもこの世を去りました。

彼の遺志により、ヨーク鉄道博物館には英国製蒸気機関車を描いた数点の絵画が寄贈され、今も多くの人々に感動を与え続けています。黒岩保美の豊かな創造性は、鉄道界に新たな息吹をもたらし、その影響は今もなお続いています。

もう一度検索