黒岩隆

黒岩 隆（くろいわ たかし、1945年生まれ）は、日本の文壇において、詩人と精神科医という二つの顔を持つ稀有な存在です。愛知県名古屋市に生を受け、医学の道を志して広島大学医学部を卒業しました。しかし、そのキャリアは医療分野にとどまらず、詩の世界でも独自の表現世界を構築しています。

詩への情熱は早くから芽生え、1966年には文芸誌『詩学』への投稿を開始します。詩作活動を通じて詩人たちとの交流を深め、詩誌『地球』などに参加した後、1972年には、戦後日本の詩壇において重要な役割を果たしてきた詩誌『歴程』の同人となりました。『歴程』は多くの著名な詩人を輩出しており、同人参加は詩人黒岩隆のキャリアにおいて大きな節目となったと言えるでしょう。

医学部卒業後、精神科医として歩み始めたキャリアも順調に進展します。1990年には、神奈川県厚木市にある相州病院の理事長に就任し、精神医療の現場における責任ある立場を担うことになりました。多忙な医療現場での職務と並行して、詩作活動を精力的に継続し、両分野での活動を両立させている点は特筆に値します。

黒岩氏の詩業は高い評価を受けています。特に、2005年に刊行された詩集『海の領分』は、翌2006年に優れた詩集に贈られる日本詩歌句大賞を受賞しました。さらに、2017年に発表された詩集『青蚊帳』は、詩壇で権威ある賞として知られる歴程賞と、優れた抒情詩に贈られる三好達治賞という二つの重要な賞を同時に受賞するという快挙を達成しました。これらの受賞は、長年にわたる詩作活動の成果と、その独自の詩世界が高く評価されたことを示しています。

黒岩氏は詩人としての活動に加え、日本の詩壇の発展にも貢献しています。2019年には、日本の現代詩を代表する詩人団体である日本現代詩人会の会長に就任し、日本の現代詩の振興と普及に尽力しました。

これまでに発表された主な詩集には以下のものがあります。

『夕鶴抄 詩集』（落合書店、1975年）
『海猫 詩集』（花神社、1986年）
『星の家』（思潮社、1994年）
『海の領分』（書肆山田、2005年）
『あかときまで』（書肆山田、2011年）
『青蚊帳』（思潮社、2017年）

詩人、精神科医、そして詩壇のリーダーとして、黒岩隆氏は多角的な才能を発揮し続けています。医学と文学という異分野を行き来しながら生み出されるその詩作は、読者に深い洞察と感動を与えています。今後の活動からも目が離せない存在です。

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