狩野永納

狩野永納：京狩野を支えた絵師とその功績

狩野永納（かのう えいのう、1631年-1697年）は、江戸時代前期を代表する狩野派の絵師です。狩野山雪の長男として京都に生まれ、幼少期より父から狩野派の画法を師事しました。21歳の若さで父を亡くした永納は、家督を継ぎ、「縫殿助」の称号を継承します。この称号は、京狩野の歴代当主が受け継いできたものであり、永納はその伝統を受け継ぐ存在であったことを示しています。

さらに、永納は自身の名前にも「永」の字を用いました。これは、家系の祖先である木村永光や、狩野永徳への敬意、そして狩野派の伝統への強い帰属意識を表しています。この「永」の字は、後の京狩野の画家の名前にも受け継がれることになります。ただし、狩野家とゆかりのある「山」の字も完全に捨てたわけではなく、永納自身も「山静」という号を用いています。

永納は、絵師としての才能だけでなく、卓越した経営手腕も持ち合わせていました。禁裏の再建工事に際しては、狩野探幽、海北友雪、土佐光起らと共に重要な役割を担い、数々の作品を手掛けました。具体的には、『禁中御絵画工記』に記録が残る「竹図」や「軍鳩図」、「松鷹図」などがあります。これらの作品は現存していませんが、当時の宮廷絵画において、永納が重要な役割を担っていたことを示す貴重な記録となっています。

永納の活動は、宮廷絵画にとどまりません。彼は学究肌でもあり、絵を描く傍ら、古画の研究にも熱心に取り組み、鑑定にも精通していました。その知識と経験は、後の世代の画家たちにとって貴重な財産となったことでしょう。

永納の最も重要な業績の一つに、『本朝画史』（全5巻）の編纂があります。これは、日本最初の画家列伝であり、父の遺稿を引き継ぎ、黒川道祐の協力を得て完成させました。この書は、現在でも日本美術史研究において重要な基礎資料として活用されています。永納は、単なる絵師としてだけでなく、美術史研究者としての側面も持ち合わせていたと言えるでしょう。

永納は、長子である狩野永敬に家督を譲った後、剃髪して余生を過ごしました。そして、父である山雪、祖父である山楽と共に泉涌寺裏山に葬られました。

狩野永納は、優れた絵師であると同時に、家督相続、宮廷絵画への貢献、そして画史編纂など、多様な活動を通して京狩野の発展に大きく貢献した人物です。彼の生涯と業績は、日本の美術史において重要な位置を占めています。彼の功績は、数々の文献や研究論文で高く評価されており、現在もなお、後世の絵師や研究者たちに大きな影響を与え続けています。 永納に関する研究は継続されており、新たな発見や解釈が期待されます。 今後の研究によって、彼の作品や活動に関する理解がさらに深まることが期待されます。

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