黒板勝美

黒板勝美：日本古代史研究の巨人、そしてエスペラントの提唱者

黒板勝美（1874-1946）は、日本の歴史学界に多大な貢献を果たした著名な歴史学者です。東京帝国大学名誉教授の称号を得て、日本古代史と日本古文書学の両分野で卓越した業績を残しました。その名は、数々の歴史研究の礎を築いただけでなく、国際的な言語であるエスペラントの普及活動にも深く関わっていたことで知られています。

長崎県に生まれた黒板は、旧制大村中学校、旧制第五高等学校を経て、1896年に帝国大学文科大学国史科を卒業。その後、帝国大学大学院に進学する傍ら、経済雑誌社に勤務し、『国史大系』の校訂にも携わりました。この経験は、後の彼の歴史研究に大きな影響を与えたことは間違いありません。

1901年には東京帝国大学史料編纂員に就任。その後、講師、助教授を経て、1919年には教授に昇進しました。34年間に渡る東京帝国大学での教職生活において、黒板は多くの優秀な後進を育成。同時に、古文書学の体系化にも尽力しました。正倉院文書の調査開始、東寺や金剛峯寺の古文書整理、そして『大日本古文書』の編纂主宰など、その活動は多岐に渡ります。

彼の研究活動は、史料編纂に留まりませんでした。1929年からは『新訂増補国史大系』の編纂に着手し、日本の歴史研究の基礎となる古典籍の普及に貢献しました。また、古社寺保存会や史蹟名勝天然記念物調査会などの委員を歴任し、文化財の保存にも尽力しました。1934年には、自ら日本古文化研究所を創設、所長として藤原京跡の発掘調査を指導し、藤原京朝堂院の規模を明らかにするなど、考古学分野にも貢献しています。晩年には、国立歴史博物館構想にも関わっていました。

黒板の皇室関連の業績も注目に値します。1924年には臨時御歴代史実考査委員会委員や臨時東山御文庫取調掛嘱託として、歴史資料の調査・整理に貢献しました。さらに、聖徳太子奉賛会や吉野神宮奉賛会の設立にも関与するなど、社会貢献にも積極的な姿勢を見せていました。

学問研究以外にも、黒板はエスペラント運動に深く関わっていました。1906年には日本エスペラント協会を設立し、1908年には、新村出とともに、ドレスデンで開催された第4回世界エスペラント大会に日本代表として参加しました。

黒板勝美の人物像は、門下生や同僚の証言から多角的に理解できます。豪放さと細心の両面を兼ね備え、体制側で活動する一方で、在野的な傾向も強かったと評されています。その研究姿勢は、国史の大局観と精密な史料校訂の両方を重視するものでした。

膨大な著作・編集・校閲など、多様な活動を通して日本の歴史研究と文化保存に貢献した黒板勝美。その生涯は、学問への飽くなき探究心と、社会への深い関与を体現するものでした。彼の功績は、現代においても高く評価され、日本の歴史学発展に大きな足跡を残しています。 彼の甥である黒板伸夫氏も歴史学者として知られており、その妻は作家である永井路子氏です。 これらのつながりも、黒板勝美の生涯を考える上で興味深い要素と言えます。

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