黒板消し

黒板消し（こくばんけし）

黒板消しは、学校や会議室などで使用される黒板に、チョークを用いて書かれた文字や図などを消去するために開発された道具です。別名として「ラーフル」あるいは「黒板拭き」と呼ばれることもあります。日本国内においてこの道具が広く普及したのは、白墨メーカーである橘高白墨が全国の学校に導入を進めた貢献が大きいとされています。黒板消しは、教育現場をはじめ、様々な場面で円滑なコミュニケーションを支える役割を担っています。

形状と構造

一般的な黒板消しは、手に持って操作しやすいよう、直方体の形状をしています。表面側は合成樹脂や木の板、あるいは革などが用いられ、持つ部分となります。一方、黒板に直接触れる裏面は、主にコーデュロイなどの柔らかい布地が貼られています。通常、持つ部分には取っ手ではなく、布製の「バンド」が取り付けられており、ここに手を通して使用します。裏面の布地の内部にはスポンジが内蔵されており、このスポンジの適度な弾力性によって、黒板の表面にわずかな凹凸があっても柔軟に対応し、チョークの粉を効果的に拭き取ることができます。

標準的なサイズは、例えば文庫本の横幅を少し短くした程度が一般的です。しかし、一度に広い範囲を効率的に消す目的で長辺がより長い大型タイプや、手軽に持ち運びできる手のひらサイズの小型タイプなど、用途に応じて多様な種類の製品が存在します。多くの場合、黒板の下部にあるチョーク受け（桟）に収納されることを想定しており、その桟の幅に収まるサイズが標準的となっています。

使用法

黒板消しの使い方は非常に直感的で簡単です。基本的には、消したい文字や絵が書かれた場所の上を、黒板消しの布部分でなぞるだけで済みます。より広範囲を綺麗に拭き取るためには、黒板の書かれている・書かれていないにかかわらず、全体を対象に、縦方向に拭くなら常に縦方向、横方向に拭くなら常に横方向と、一定の方向に沿って規則的に動かすのが効果的とされています。

注意すべき点として、黒板消しにチョークの粉が大量に付着しすぎると、かえってその粉が黒板に再付着し、表面が白っぽく汚れて見えてしまうことがあります。このため、黒板を綺麗に保つためには、黒板消し自体も定期的に清掃し、付着した粉を取り除く必要があります。専門の黒板消しクリーナー（掃除機のような仕組みで粉を吸い取る装置）が設置されている場合はそれを利用するのが最も衛生的ですが、そうでない場所では、屋外などで黒板消しを二つ手に持って叩き合わせ、粉を払い落とす光景もかつてはよく見られました。ただし、この方法では大量の粉が空気中に飛散するという欠点があります。近年では、黒板と一体化して黒板消しの清掃も同時に行えるような製品も開発されています。

「ラーフル」という呼称

「ラーフル」という言葉は、黒板消しのメーカーや文具を取り扱う卸売業者などの間では、いわゆる業界用語として一般的に使われています。また、地域によっては一般の人々の間でも「黒板消し」ではなく「ラーフル」と呼ぶことが多く、特に鹿児島県、宮崎県南西部、愛媛県などがその例として知られています。普通名詞として商品名に使用されているケースも見られます。この「ラーフル」という言葉の語源については諸説ありますが、鹿児島工業高等専門学校教授（当時）の上村忠昌氏による論文「ラーフル考」では、オランダ語で「ボロ布」を意味する「rafel」が由来である可能性が指摘されています。かつては「ラーフル」という呼び名が全国的に主流だった時代もあったようですが、意味合いが分かりにくかった一部の教員などが、道具の機能そのものを表す「黒板消し」という言葉を使い始めたことが、その分かりやすさも手伝って次第に全国に広まっていったと考えられています。

関連する道具

黒板と同じく筆記・消去を行うホワイトボードには、専用の消去用具があります。これは「ホワイトボード消し」と呼ばれることは少なく、「ホワイトボードイレーサー」、「クリーナー」、あるいは黒板消しになぞらえて「白板消し」と言われるのが一般的です。

文化的側面

黒板消しは、学校という環境において、その特性からしばしば悪戯の道具として利用されることがありました。古典的な悪戯として知られるのは、教室の入口のドアの上に黒板消しを挟んでおき、ドアを開けて入室しようとした人の頭上に落とそうとするものです。これは現代ではあまり見られなくなりましたが、実際にはドアを開けた瞬間に落下することが多く、体がドアを完全に通り過ぎる前に落ちてしまうため、頭に当たることは稀で、手に当たることがほとんどでした。この他、現在でも見られる悪戯として、黒板消しを両手に持って叩き合わせ、付着したチョークの粉を故意に周囲に飛散させる行為などがあります。

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