黒江

黒江（くろえ）

和歌山県海南市の北部に位置する地名です。2012年（平成24年）3月末時点の人口は2,275人でした。郵便番号は642-0011です。

地理

黒江は海南市の北部に位置し、北は和歌山市冬野、東は岡田、南は日方、西は船尾と隣接しています。また、北西側では和歌山市の毛見および内原地区とも接しています。地域内には、和歌山県道9号岩出海南線、和歌山県道135号和歌山海南線、和歌山県道137号三田海南線が通っています。これらの県道は重複している区間が多く、実質的には複数のルートとして利用されています。当地は、紀州漆器（黒江塗り）の一大生産地として知られており、また清酒「黒牛」で有名な酒造メーカー、名手酒造店が所在します。

広域地名

「黒江」という名称は、文脈によって指す範囲が異なります。狭義では大字としての黒江のみを指しますが、広義には海南市立黒江小学校の校区のうち海南市に属する地域全体を指す場合があり、この場合は船尾、黒江、そして岡田の一部を含めて「黒江地区」と総称されることがあります。一方、海南市役所が定義する市内15地区区分に従うと、大字黒江は単独で「黒江地区」、大字船尾は「船尾地区」、大字岡田は「亀川地区」の一部と明確に区分されています。

歴史

黒江の集落は、古くから上熊野街道沿いに形成されてきました。かつては船尾山の南麓一帯が入江となっており、『紀伊続風土記』によれば、この入江の干潟に干潮時に現れる、牛に似た黒い石が「黒牛潟」と呼ばれ、これが地名の由来になったと伝えられています。室町時代になると、木地師たちがこの地に定住し、漆器や日常使いの道具を作り始めたと言われています。江戸時代初期には、紀州藩の保護を受けて漆器の一大産地として目覚ましい発展を遂げました。正保年間には、干潟が埋め立てられ、水運の要として機能した堀川の両岸に、川端通りと呼ばれる独特な町並みが形成されました。明治時代に入ると、黒江の漆器製造はそれまでの高級品志向から大衆向けへと生産方針を転換します。しかし、生産の近代化が進むにつれて、昭和44年に岡田地区に漆器団地が造成され、多くの漆器関連業者がそちらへ移転していきました。

沿革

1889年（明治22年）4月1日：町村制施行に伴い、名草郡に黒江村が誕生。黒江はその大字となります。
1896年（明治29年）3月26日：名草郡と海部郡が合併し海草郡が成立。黒江村は海草郡の所属となります。
1896年（明治29年）7月7日：黒江村が町制を施行し、黒江町となります。
1934年（昭和9年）5月1日：黒江町は日方町、内海町、大野村と合併し、現在の海南市が発足。これに伴い黒江町黒江は海南市黒江となりました。

交通

JR西日本紀勢本線が地域の北東部を通過していますが、地内には駅は設置されていません。最寄りの鉄道駅としては、隣接する岡田地区に位置する黒江駅が利用できます。

主要道路としては、和歌山県道9号岩出海南線、和歌山県道135号和歌山海南線、和歌山県道137号三田海南線が通っています。前述の通り、これらの県道には重複区間や迂回線が多く存在し、全体として一体的な交通ネットワークを形成しています。

主な施設・史跡

川端通り: 堀川沿いに位置し、家々が通りに対して斜めに建てられた「のこぎり歯状」と呼ばれる独特な景観が特徴です。2011年には「わかやま景観づくり協定」の第一号として認定されました。
海南市水道部室山浄水場
黒江地区集会所
海南市立室山保育所
海南黒江郵便局、海南室山郵便局
名手酒造: 地元の銘酒「黒牛」を醸す酒蔵です。
中言神社（なかのごとじんじゃ）: 境内に湧く「黒牛の水」は「紀の国名水」に選定されています。境内には柿本人麻呂の歌碑も建立されています。
浄国寺: 浄土真宗の寺院です。
旧尾崎林太郎家住宅: 江戸時代より代々大野十番頭を務めた尾崎家の住宅。主屋、前蔵、座敷、三階蔵の4棟が国の登録有形文化財に登録されています。
古民家カフェ 黒江ぬりもの館: 登録有形文化財である池庄漆器店の主屋を改修したカフェレストランです。
そうげん堂: 登録有形文化財である田島漆店旧工場の新蔵、玄関棟、食堂、商品蔵を活用したカフェレストランです。（所在地は隣接する船尾地区ですが、黒江と関連が深い施設です。）

祭事・年中行事

4月1日：中言神社の例祭が執り行われ、神輿渡御が行われます。
* 11月第1土・日曜：紀州漆器まつりが開催され、多くの来場者で賑わいます。

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