黒瀬ダム (東広島市)

広島県東広島市黒瀬町宗近柳国に位置する黒瀬ダム（くろせダム）は、地域にとって重要な水資源であり、また憩いの場としても親しまれているダムです。一級河川黒瀬川の支流であるガガラ川に築かれ、その穏やかな湖面は周囲の豊かな自然と調和しています。

このダムの最も主要な目的は、農業用水の安定的な供給です。黒瀬ダムによって貯えられた水は、周辺地域の広大な農地を潤すために利用されています。その貯水規模は広島県内において7番目の大きさを誇り、県内の数ある農業用貯水池の中でも特に重要な位置を占めています。特に、雨量が少なくなりがちな渇水期には、主要な水源からの取水が困難になる場合がありますが、黒瀬ダムはこうした時期においても補助的な水源として機能し、農作物に必要な水を安定的に供給することで、地域農業の維持・発展に大きく貢献しています。水の安定供給は、稲作をはじめとする様々な農産物の生産にとって欠かせない基盤であり、黒瀬ダムはその重要なインフラとしての役割を果たしています。

黒瀬ダムの魅力は、単に農業用水の供給にとどまりません。ダム湖の周囲には、歩きやすいように整備された散策路が設けられており、その全長は約2キロメートルにも及びます。この遊歩道は、日々のウォーキングや軽いジョギングに最適であり、四季折々の風景を楽しみながら心地よく体を動かすことができます。晴れた日には、きらめく湖面を眺めながらの散策は、心身のリフレッシュにもつながります。

特に春、黒瀬ダム湖畔は華やかな装いに変わります。湖畔沿いには、およそ500本ものソメイヨシノなどが植栽されており、見頃を迎える頃には、湖面を縁取るように桜色の美しい帯が出現します。満開時には、まるでピンク色の雲がたなびいているかのような壮観な景色が広がり、多くの花見客で賑わいます。湖面に映る桜もまた格別の美しさがあり、訪れる人々の目を楽しませています。春の暖かい日差しの中、湖畔での花見は、地域住民だけでなく遠方からの訪問者にとっても忘れられない思い出となるでしょう。

また、黒瀬ダムは釣り愛好家にとっても魅力的なスポットです。特にバスフィッシングの好ポイントとして知られており、週末には多くの釣り人が糸を垂らす姿が見られます。水辺の豊かな生態系は、様々な魚類の生息を可能にし、釣り人にとっては挑戦のしがいのある環境を提供しています。釣り以外にも、周辺では鳥の観察や、豊かな自然の中でピクニックを楽しむなど、様々なレジャー活動が可能です。ダムは、単なる治水・利水施設ではなく、地域住民や訪問者が自然と触れ合い、余暇を楽しむことができる多目的空間として機能しています。

黒瀬ダムへのアクセスは、公共交通機関を利用する場合、JRバス中国の「上黒瀬」バス停で下車し、そこから歩いておよそ20分ほどです。車でのアクセスも可能であり、駐車場も整備されているため、気軽に訪れることができます。

このように、黒瀬ダムは農業用水供給という重要な役割を担う一方で、美しい自然景観と整備された施設により、地域住民の憩いの場や、訪れる人々のレジャースポットとしても親しまれています。春の桜をはじめ、四季を通じて異なる表情を見せるダム湖周辺の自然は、訪れるたびに新たな発見をもたらしてくれるでしょう。地域にとってかけがえのない存在として、黒瀬ダムはその機能を果たし続けています。

関連項目:

田房ダム
三永水源地堰堤
二級ダム

参考文献:

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