黒田俊雄

黒田俊雄（くろだ としお）

黒田俊雄は、1926年1月21日に富山県に生まれた日本の歴史学者であり、専門は日本中世史です。彼は大阪大学の名誉教授として知られ、文学博士の学位を取得しています。また、彼の業績をまとめた『黒田俊雄著作集』全8巻が法藏館から出版されています。

経歴

黒田は、第四高等学校文科甲類を卒業した後、1948年に京都大学文学部史学科を卒業しました。卒業後の1955年、彼は神戸大学教育学部の専任講師に就任し、1961年には大阪大学文学部の助教授となります。その後1975年に教授に昇進し、1981年からは3期にわたり学術会議の会員を務めました。1983年には「日本中世の国家と宗教」という学位論文を提出し、文学博士号を取得。1989年に大阪大学を定年退職し名誉教授となると、その後は大谷大学で教鞭を執りました。

研究内容・業績

権門体制論

黒田が提唱した権門体制論は、日本中世の社会・政治・制度史の研究において重要な議論の一つです。この理論は1963年に発行された岩波講座『日本歴史 中世2』に収められた論文「中世の国家と天皇」で初めて示されました。彼は、日本社会が古代から中世にかけて天皇を象徴とする公家権力、宗教権力、新興の武家権力の三者が対立していたとする従来の見解に対し、三者が相互に補完的な関係にあり、一種の分業によって権力を行使していたと主張しました。この考えは学界に大きな影響を与え、彼の理論を支持する声と批判する声の両方が存在します。特に今谷明は黒田の理論を平泉澄の研究に依存しているとする一方で、細川涼一はそれに反論し、黒田の理論の独自性を主張しました。

顕密体制論

天皇に対する黒田の見解も特筆すべき点です。彼は、戦後の歴史学者が天皇の神性を否定し、社会構成史の観点から権力の断絶を説明してきたことについて、それだけでは不十分だと指摘しました。彼は、歴史上の天皇は実権者であり、権力の頂点であり、さらには精神的な呪縛の装置であると考えていました。特に昭和天皇については、彼の戦争責任を明確にすることが必要だと主張し、戦後の憲法体制を批判する発言も行いました。

家族・親族

彼の娘である黒田景子もまた、南タイ・マレーシア史を専門とする歴史学者です。

著書

黒田俊雄の著作は多岐にわたり、以下のような重要な著作があります。

• - 『日本の歴史8 蒙古襲来』中央公論社（1965年）
• - 『体系日本歴史2 荘園制社会』日本評論社（1967年）
• - 『日本中世封建制論』東京大学出版会（1974年）
• - 『日本中世の国家と宗教』岩波書店（1975年）
• - 『歴史学の再生 中世史を組み直す』校倉書房（1983年）
• - 『黒田俊雄著作集』全8巻（法藏館）（1994年 - 1995年）

結び

黒田俊雄は、その生涯を通じて日本の中世史に関する研究を深め、数々の業績を残しました。彼の思想や研究は、後世の歴史学者たちに多大な影響を与えており、日本史研究の発展に寄与しています。彼が生涯を通じて追及した問題意識は、今なお重要なテーマとして研究され続けています。

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