黒田和志

黒田和志：華族社会を彩った裁判官と政治家の生涯

黒田和志（1851-1917）は、明治から大正時代にかけて活躍した人物です。裁判官としてのキャリアを積み重ね、政治家として貴族院議員を務めるなど、多岐にわたる才能を発揮しました。華族である彼の生涯は、激動の時代の流れと、特異な家族関係によって彩られています。

華族としての出自とキャリア

対馬府中藩主の六男として生まれた黒田和志は、旧久留里藩黒田家の当主の養子となり、黒田姓を名乗るようになりました。1881年、家督を継承し、1884年には子爵に叙爵されています。華族としての地位を確立した彼は、その後、司法界へと進出しました。

大審院書記を皮切りに、仙台始審裁判所判事補、長崎控訴院書記、横浜地方裁判所書記、横浜区裁判所公証人など、数々の要職を歴任しました。司法における経験と知識を積み重ね、高い能力を認められたことがうかがえます。

1897年には貴族院子爵議員に選出され、政治の世界でも活躍の場を広げました。日露戦争における功績により勲章を授与されるなど、国家への貢献も高く評価されました。

個性豊かな家族たち

黒田和志の家族もまた、特筆すべき点が多くあります。

長男・黒田広志: 子爵を継承し、國學院大學卒業後、宮内庁勤務や事業に携わりました。
次女・雅子: エチオピア皇族との婚約が知られています。関東高等女学校卒業後、複雑な家庭環境や養父との生活を経て、婚約に至るまでの経緯は、彼女の人生に大きな影を落としました。婚約破談後、海軍技師と結婚し、埼玉県で町議を務めるなど、波乱万丈な人生を送っています。彼女の人生は、後に書籍『マスカルの花嫁―幻のエチオピア王子妃』としてまとめられています。
その他の子息たち: 長男・経志は家督を継ぎ、黒田家13代当主となりました。四男は朝鮮李王家の李徳恵と結婚しましたが、離婚しています。三女と四女もそれぞれ結婚し、それぞれの道を歩みました。それぞれの家庭環境や社会的地位、そして人生の選択は、時代背景や個々の能力、そして偶然が複雑に絡み合った結果といえるでしょう。

黒田和志の死とその後

1917年、東京市四谷区の自宅で病のため死去しました。彼の死は、華族社会だけでなく、司法界にも大きな影響を与えたことでしょう。

黒田和志の生涯は、華族としての特権と、個人の能力と努力によって築き上げられた成功、そして時代特有の困難が複雑に絡み合った物語です。彼の家族の物語は、個人の生き方や時代の流れについて、多角的な視点を与えてくれます。黒田和志という人物を通して、明治・大正時代の日本社会の一端を垣間見ることができるでしょう。

参考文献

人事興信所編『人事興信録 第4版』人事興信所、1915年
『貴族院要覧（丙）』昭和21年12月増訂、貴族院事務局、1947年
『大正過去帳 物故人名辞典』東京美術、1973年
衆議院・参議院編『議会制度百年史 - 貴族院・参議院議員名鑑』大蔵省印刷局、1990年
霞会館華族家系大成編輯委員会『平成新修旧[[華族家系大成]] 上巻』霞会館、1996年
* 杉謙二編『華族畫報 下』吉川弘文館、2011年（華族画報社大正2年刊の複製）

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