黒田綾山

黒田綾山（くろだ りょうざん）

黒田綾山は、宝暦5年（1755年）に生まれ、文化11年4月21日（1814年6月9日）に没した江戸時代中期後期の文人画家です。名は良・良甫、字は亮輔・忠良、号は綾山のほかに起雲道人などを用いました。讃岐高松（現在の香川県高松市）出身ですが、備中玉島に移り住み、現在の岡山県域における文化集団の基礎を築いた人物として知られています。

生涯

綾山は、高松の町家で生まれ、幼少の頃から読書と絵画を好みました。最初に絵を学んだのは、江戸の幕臣で狩野派の画家であった加藤文麗であると伝えられています。その後、池大雅に傾倒し、21歳の時（安永4年・1775年）に大坂へ出て、大雅の高弟である福原五岳に入門しました。同門の林閬苑とは親友となりました。

26歳（安永9年・1780年）の時、備中玉島に遊歴し、絵を売って生活しながら、地元の人々と親交を深めました。その後、山陽道・讃岐・京坂など諸国を遍歴しましたが、天明5年（1785年）に再び玉島に戻り、永住を決意します。当時、天領であった玉島は海運を中心に商業が発達し、商人の町として活気がありました。綾山は居宅を起雲屈と名付け、絵を描くことを生業としました。天明の飢饉の際には、困窮した人々に自らの絵を与えて援助したと伝えられています。最初の妻に先立たれた後、再婚し、44歳を過ぎてから2人の娘をもうけました。

次第に画業の名声が高まり、丹波亀山藩に絵師として招聘されましたが、これを固辞しました。しかし、亀山藩からは厚遇を受け、終生にわたり俸禄が支給されました。家庭では、次女を3歳で亡くし、妻も早世するという不幸に見舞われました。

画風と交友

綾山は、明の呉派の銭貢の画風を敬慕していました。若き日の田能村竹田は、綾山に絵の批評を請うたと言われています。書風は大雅に傾倒し、独自の書風を確立しました。詩文にも長け、和歌も詠みました。菅茶山、西山拙斎、頼春水、皆川淇園、横溝藿里、福武光重など、多くの著名な文人と交流しました。

60歳で病没し、墓所は岡山県倉敷市玉島の竹浦共同墓地にあります。法名は「崇高綾山居士」です。

門弟と顕彰

綾山の門弟には、白神皞々、岡本豊彦、小野雲鵬、岡本綾江、守屋中岳らがいました。綾山の没後、門人の岡本綾江が中心となり、顕彰碑を建立する計画が立てられ、大坂の儒者・篠崎小竹に撰文が依頼されましたが、資金難から長らく実現しませんでした。その後、白神皞々に師事した富商・中原国華が費用を捻出し、綾山の没後34年にあたる嘉永元年（1848年）に、丸山高運寺に「綾山黒田翁之碑」が建立されました。

代表的な門弟

白神皞々
岡本豊彦
小野雲鵬
岡本綾江
守屋中岳

作品

（作品リストは省略）

参考文献

脇田秀太郎 「黒田綾山碑について」『美術史』第20号、1956年3月31日、pp.136-139
古城真一「黒田綾山」『倉敷三代画人伝 —黒田綾山・岡本豊彦・古市金峨 —』 倉敷史談会、1983年
倉敷市史研究会編集 『新修倉敷市史 第四巻 近世（下）』 倉敷市、2003年3月28日、pp.675-680、ISBN 4-88197-710-5
* 田能村竹田『山中人饒舌』

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