黒鳥兵衛

黒鳥兵衛伝説

越後国（現在の新潟県）に伝わる伝説上の人物、黒鳥兵衛。

概要

平安時代後期、安倍貞任の残党であった黒鳥兵衛は越後国に侵入し、悪逆非道の限りを尽くしたと伝えられています。朝廷の討伐軍すらも打ち破るほどの勢力を持っていましたが、その暴虐ぶりに困り果てた朝廷は、佐渡国に配流されていた源義綱（あるいは源義家とも）を赦免し、黒鳥兵衛討伐を命じました。

黒鳥兵衛は妖術を駆使して抵抗しましたが、源義綱（または義家）の軍勢に次第に追い詰められ、現在の新潟市南区味方の陣に立て籠もります。当時、その一帯は泥沼地帯であり、容易に侵入することが困難な場所でした。難攻不落の陣に手を焼いていた源義綱は、ある日、二羽の鶴が木の枝を足に掴んで沼の上を歩くのを目撃します。これこそ神の啓示だと考えた義綱は、かんじき（雪上や湿地で足が沈まないようにする歩行補助具）を兵士に履かせ、一気に攻め込みました。奇襲を受けた黒鳥兵衛はついに討ち取られ、首を刎ねられたとされています。

後世への影響

黒鳥兵衛の伝説は、越後国一帯に様々な影響を与えました。

かんじきの起源: 源義綱（または義家）が黒鳥兵衛討伐に使用したかんじきは、その起源とされています。かんじきの緒を立てた場所が、現在の新潟市西区黒鳥緒立であると伝えられています。
地名の由来: 黒鳥兵衛の首が斬り落とされた場所が、現在の新潟市西区黒鳥であるとされています。また、その場所が黒埼という地名の起源になったとも言われています。
首塚と八幡神社: 黒鳥兵衛の首は塩漬けにされ、埋められた場所に首塚が築かれました。その地を鎮護するために建てられた祠が、緒立の八幡神社であるとされています。
緒立温泉: 塩漬けにされた黒鳥兵衛の首の影響で、その場所から塩分を含んだ水が湧き出るようになり、それが緒立温泉になったと伝えられています。
* 胴鳴り: 時折、空に轟音が響き渡ることがあり、それは首を斬られた黒鳥兵衛の胴が首を求めて咆哮する音だと人々は恐れ、「胴鳴り」と呼んだそうです。

このように、黒鳥兵衛の伝説は越後国一帯を舞台とした壮大な軍記物として語り継がれており、伝説ゆかりの地は新潟市黒埼地区をはじめ、新潟県北部に広く分布しています。緒立からは緒立遺跡や的場遺跡といった古い住居跡が見つかっていますが、黒鳥兵衛伝説は史実に基づくものではなく、後世の創作であると考えられています。

黒鳥兵衛の伝説は、地域の地名や文化、風習に深く根付いており、今もなお人々に語り継がれています。

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