龍尾寺

龍尾寺（りゅうびじ）

龍尾寺は、千葉県匝瑳市大寺に位置する真言宗智山派の寺院です。山号は「天竺山」であり、本尊は釈迦如来となっています。この寺院は、龍角寺（千葉県印旛郡栄町）や龍腹寺（千葉県印西市）と共に「関東三龍の寺」の一つとして知られています。

歴史

龍尾寺の創建に関する伝承は、斉明天皇の7年（661年）、すなわち飛鳥時代にさかのぼるとされています。しかし、この開創年は、古い寺があった地名「大寺」から名付けられたと考えられています。実際には、龍角寺の方が早く創建されており、龍尾寺の開創はそれに続く時期と推測されています。

寺に伝わる歴史がまとめられた『略縁起』によると、和銅2年（709年）には全国的な大旱魃が発生し、多くの人々が食糧不足に苦しむこととなりました。これを憂慮した元明天皇は、釈命上人を導師として雨乞いの儀式を行うよう命じました。その際、惣領村から龍神が空に舞い上がるという奇跡が起こり、龍の尾が垂れ下がったことからその村は「尾垂村」と名付けられました。

この龍神は後に雷鳴と共に3つに裂けて落ち、それぞれ頭部が龍角寺、腹部が龍腹寺、尾部が今日の龍尾寺の位置に落ちたと伝えられています。これによって、龍尾寺は「天竺山尊蓮院龍尾寺」とその名を改め、名刹としての地位を確立しました。

その後も、龍尾寺には多くの参拝者が訪れ、七堂を完備した寺院として栄えました。特に、天暦年間（947年 - 957年）には観宿僧都という法師による雨乞いが成功し、これ以降もたびたび雨の恩恵を受けることとなります。

しかし、南北朝時代の応安3年（1370年）、龍尾寺は火災に見舞われ、大部分の建物が焼失しました。この火事を経て、後に再建された堂宇が現在残っている建物です。

境内

境内には大同2年（807年）に弘法大師が訪れた際に掘ったとされる「お手堀の井戸」があります。この井戸の水は洗眼にも使用されていると伝えられています。また、応安6年（1373年）の板碑が残っており、これも火災後に建てられたものです。

このように、龍尾寺は長い歴史を持つ文化的な価値の高い寺院であり、今も多くの信者に親しまれています。自分自身や他者のために雨乞いを行う時代から、今日の信仰へと続く流れを感じることができる場所でもあります。訪れることで、深い歴史を感じ、静かな癒しの時間を過ごすことができるでしょう。

参考文献

• - 井上孝夫「下総地域における龍神信仰」
• - 高橋莞爾「印旛沼の龍伝説に学ぶ」
• - 須田勉『日本古代の寺院・官衙造営』

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