龍造寺季明

龍造寺季明（龍造寺伯庵）について

龍造寺季明（りゅうぞうじ すえあき）は、生没年不詳ながら、江戸時代前期にその名を残した人物です。龍造寺高房の子とされ、龍造寺氏の嫡流を自称しました。一般には龍造寺伯庵（りゅうぞうじはくあん）として知られています。

生涯

季明の生涯は、出自を巡る複雑な事情から始まりました。母の身分が低かったため、父である高房からも嫡男とは認知されておらず、高房自身も季明の存在を知らなかったとされています。しかし、高房の死後、季明が突如として現れたことで、佐賀藩は混乱しました。龍造寺氏に連なる一部の藩士が季明の復権運動に同調したことから、彼が高房の子であることは事実と見られています。

若くして父を亡くした季明は、僧となりました。佐賀藩は高房の遺児として丁重に扱いましたが、実際には軟禁状態に置き、その動向を警戒していました。しかし、季明は藩の慰留を拒み出奔しました。藩主の鍋島勝茂は、従兄の石井茂成を派遣して帰藩を説得しましたが、季明はこれに応じませんでした。

その後、還俗した季明は、3代将軍徳川家光に対し、再三にわたり龍造寺氏の再興を訴えました。しかし、幕府は鍋島氏による藩政が安定していたため、季明の訴えを真剣に取り合うことはありませんでした。

寛永11年（1634年）には、龍造寺隆信の甥である多久安順が、季明の嫡流自称に対し、「庶子に嫡流を名乗る資格なし」と反論しました。さらに安順は、「龍造寺氏の嫡流があるとすれば自分こそが最も相応しい」と主張し、季明の一連の活動を封じました。幕府は、度重なる訴訟を起こす季明の扱いに困り、最終的に会津藩に預けるという裁定を下しました。

季明の子孫は、会津藩士として存続し、明治維新を迎えることになります。季明の生涯は、龍造寺氏の復権を求める強い意志と、それに対する周囲の複雑な思惑が交錯した、波乱に満ちたものであったと言えるでしょう。

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