多久安順

多久安順（たく やすとし）

多久安順は、安土桃山時代から江戸時代前期にかけての武将で、龍造寺氏、そして鍋島氏の家臣として活躍しました。多久鍋島家（後の多久氏）の初代当主であり、その生涯は激動の時代を映し出しています。

生い立ちと龍造寺家臣時代

安順は、永禄9年（1566年）または永禄6年（1563年）に、龍造寺長信の子として誕生しました。初めは龍造寺家久と名乗りました。後に初代多久邑主となり、多久長門安順と名を改めます。正室には、鍋島直茂の次女である千鶴を迎えました。この婚姻からも、彼が龍造寺氏、そして鍋島氏の両家からいかに重んじられていたかが窺えます。

文禄・慶長の役と陶工招聘

安順は、文禄・慶長の役に参加し、その帰還の際に、朝鮮から陶工の李参平らを伴って帰国しました。彼らを多久で預かり、保護したことが、肥前国における磁器（伊万里焼）の源流となる大きな出来事でした。この功績により、安順は文化面においても、大きな足跡を残しました。

関ヶ原の戦いと鍋島氏への転身

関ヶ原の戦いでは、主家である龍造寺氏が西軍に属しましたが、安順は徳川家康に大量の米を送り、その後の展開を見据えた行動を取りました。慶長12年（1607年）に龍造寺高房が死去し、龍造寺氏本家が断絶すると、安順はその後を継いだ鍋島氏に重用され、親族と同等の待遇を受けました。佐賀藩の請役（行政官）としても活躍し、その手腕を発揮しました。

龍造寺氏の家督騒動と幕府への弁明

寛永11年（1634年）、龍造寺高房の子である伯庵が、龍造寺季明と名乗り、3代将軍・徳川家光に対し、佐賀藩領は龍造寺氏のものであると主張しました。この時、安順は幕府に出府し、自らの正統性を主張しました。彼は、庶子である季明（伯庵）が継ぐのであれば、自分こそが正統な後継者であると述べ、鍋島氏の支配の正当性を幕府に認めさせました。この一件からも、安順の政治的な手腕、そして決断力が伺えます。

死去とその後

寛永18年（1641年）、安順は生涯を閉じました。彼の跡は、養子である茂辰（後藤茂富の子）が継ぎました。また、他の養女として、伊勢菊（神代常利室）がいます。多久安順の生涯は、戦国時代から江戸時代初期という激動の時代を背景に、武将として、そして文化人としても多大な功績を残した人物であったと言えるでしょう。

安順の残した足跡は、今日の佐賀県、そして日本の歴史において、重要な意味を持っています。彼の功績は、後世に語り継がれるべきでしょう。

もう一度検索