.22ロングライフル弾

.22ロングライフル弾（.22 Long Rifle）



.22ロングライフル弾（.22 Long Rifle）は、アメリカで開発された小型弾薬で、その略称である「.22LR」として広く知られています。世界で最も多く生産され、安価に入手できる弾薬として、拳銃からライフルまで様々な銃器で使用されています。

歴史



.22口径のリムファイアカートリッジは長年定番の弾薬であり、現在でも最も多く販売されています。1887年、アメリカの銃器メーカー、J. Stevens Arms & Tool Companyが、.22 Longの薬莢に.22 Extra Longの40グレーン（2.6g）の弾丸を組み合わせて開発しました。この弾丸は、1845年のFlobert BB弾頭や1857年の.22 Smith & Wessonカートリッジの系譜を継ぎ、丸い形状をしています。その汎用性の高さから、様々なライフルやピストルで使用されています。

.22ロングライフル弾とその派生型（.22ショート、.22ロング、.22エクストラロング）は、ヒール弾を使用します。ヒール弾とは、弾丸の直径が薬莢と同じで、尾部のみが薬莢に収まるように細くなっている弾丸です。

年間生産量は2億から2.5億発と推定されており、アメリカではこれまでに生産された銃器用弾薬の半分が.22LRであるとされています。

利用



訓練・害獣駆除



.22LRは価格が安いため、訓練や害獣駆除によく使われます。また、小型で隠しやすいため、暗殺にも利用されることがあります。一方で、威力や射程距離が低く、不発弾が多いという欠点もあります。軍隊では、訓練以外ではあまり使用されません。貫通力が高いため、警察も民間人への被害を懸念して採用を避ける傾向があります。

初心者が銃器の訓練を行う際、発射時の反動で姿勢が崩れることがありますが、.22LRはほとんど反動がないため、発砲への恐怖心を克服しやすく、理想的な訓練弾薬とされています。ボーイスカウトでは100年以上にわたり、ライフル射撃の訓練に.22LRが用いられています。

発射音



.22LRは、他の大型弾薬に比べて発射音が静かです。これにより、射撃場近隣への騒音被害を軽減でき、射手の聴力への影響も少なく抑えられます。特に亜音速弾は静音性が高いため、サプレッサーとの組み合わせに適しています。

競技



オリンピックの射撃競技では、ライフル種目のスモールボアライフルや、ピストル種目の50mと25mで.22LRが使用されています。

その他の利用



.22LRの人気が高いため、AR-15やM1911など、様々な銃の「.22LR変換キット」が市販されています。これにより、低コストで訓練が可能になり、高威力弾の使用が制限される屋内射撃場でも訓練ができるようになります。多くの銃器メーカーも、.22LRモデルをラインナップに追加しています。

.22LRは、ネズミ、ヘビ、リスといった害獣の駆除にも多用されています。もともと対人用の弾薬ですが、中型獣の狩猟にも利用可能です。ウサギ、イノシシ、シカ、コヨーテなどを胸や頭への一撃で仕留めることができます。被弾部分の損傷も少ないため、狩猟に適した弾薬と言えます。

.22LRは構造が単純で小型であり、リムファイア方式を使用しているため、製造コストが最も低い弾薬の一つです。量産効果により、1発あたり10セント（約10円）以下で販売されることもあります。通常は50発または100発入りのパッケージで販売されていますが、お得用のものは「ブリックパック」に雑多に詰められて販売されることもあります。競技用に使われる精密弾も比較的安価に入手できます。

威力



.22ロングライフル弾の威力は、銃身の長さや作動方式によって異なります。例えば、ボルトアクションライフルと半自動ライフルでは動作が異なる場合があります。.22LRは150ヤード（140m）程度まで有効ですが、実用範囲はそれほど広くありません。150ヤードを超えると弾道が大きく低下するため、補正が難しくなります。短い射程、小さな発射音、軽い反動は、練習弾として適しています。

.22LRの精度は優れていますが、特筆すべきレベルではありません。ライフル射撃においては、100ヤード（91m）以内で弾丸が超音速から亜音速に減速することが、精度に影響を与える可能性があります。

100ヤードを基準にゼロインした場合、標準的な.22LR弾の弾道は、50ヤードで約69mm上昇し、150ヤードで約27cm下降します。リスなどの小動物を標的とする場合、75ヤードでゼロインすることが推奨されます。

狩猟用弾薬として、.22LRは主に小型の獲物を仕留めるために使用されます。リスやウサギには150ヤード以上、イノシシやマーモット、キツネには80ヤード以上で有効です。コヨーテのような大型動物にも有効ですが、射程は65ヤード以内であり、頭や胸を正確に狙う必要があります。

.22LR弾は、他の大型弾薬に比べて威力が低いと見なされがちですが、実際には人を容易に殺傷することが可能です。過去の銃撃事件では、.22LR弾が用いられ、多くの死傷者が出ています。

.22LR弾は、400ヤード（370m）を飛行した後でも、約150m/sの速度を保っています。また、跳弾しやすい特性があり、水面や硬い物体に当たった際に、大きく跳ね返る可能性があります。

リムファイア弾丸は、通常、無被覆鉛（標準速度弾の場合）または銅被覆もしくは真鍮被覆（高速または超高速弾の場合）のいずれかです。銅被覆は、弾丸とバレル間の摩擦を減らし、バレルの摩耗を低減し、鉛弾丸の酸化を防ぎます。低速の標準および亜音速弾は、酸化防止のために鉛弾頭にワックス潤滑剤を塗布します。

派生型



.22LR弾は、速度によって4つのカテゴリに分類されます。

亜音速弾



名目速度が1,100ft/s（340m/s）以下の弾丸です。ターゲット射撃や競技用に使用され、より重い弾頭が採用されることもあります。静音性に優れているため、一部の射手に好まれます。超音速で飛翔する弾丸は、音速帯で空気力学的な変化を受けやすく、精度が低下する可能性があります。

亜音速弾の銃口速度は、音速よりもわずかに遅く設定されています。しかし、低温下では音速が低下するため、実際には超音速になることがあります。一部のメーカーは、亜音速弾の速度をさらに下げています。

亜音速弾は、セミオート銃では反動エネルギーが不足し、作動不良を起こすことがあります。一部の亜音速弾は、弾丸の質量を増やすことで、ブローバック動作に必要なエネルギーを確保しています。

亜音速弾には、2つのパフォーマンスクラスがあります。低衝撃エネルギーの弾丸は、屋内訓練や標的練習に用いられます。一方、高威力な亜音速弾は、小規模な狩猟や有害動物駆除に利用されます。

通常弾



1,000～1,135ft/s（305～346m/s）の速度を持つ弾丸で、一般的な速度は約1,125ft/s（343m/s）です。ほとんどの標準速度弾薬は、40グレーン（2.6g）の弾丸を使用します。

高速弾



1,200～1,310ft/s（370～400m/s）の速度を持つ弾丸です。無煙火薬を使用しており、標準的な弾丸よりも約8%速度が向上しています。

高初速弾/超高速弾



1,400ft/s（430m/s）以上の速度を持つ弾丸です。標準的な弾丸よりも軽い弾丸を使用し、銃口初速を高めています。CCIスティンガーは、その代表的な例です。薬莢が長く、より遅い燃焼速度の火薬を使用しています。レミントンヴァイパーやフェデラルスピットファイアも、同様のカテゴリーに属します。CCIヴェロシターは、標準的な長さの薬莢を使用し、人体などの軟目標に命中した際に変形しやすいホローポイント弾丸を使用しています。

散弾



至近距離での害獣駆除に用いられる、散弾を内包した弾薬です。ラットショットやスネークショットとも呼ばれます。ショットシェルと同様の構造で、発射時に散弾がプラスチックのカバーを突き破って飛散します。22口径のリボルバーやライフルで使用できますが、専用のショットガンも存在します。

その他



フルメタルジャケット弾（第二次世界大戦中に開発）や、曳光弾も存在します。

構造



.22リムファイアカートリッジは、他の多くのカートリッジとは異なる構造をしています。弾丸は薬莢の「ネック」ではなく、ケースの後部に「ヒール」と呼ばれる段があり、ここで圧締されます。この構造は、弾薬の信頼性に悪影響を与える可能性のある水分や他の要素への暴露から、カートリッジを最小限に保護するという点で、本質的な弱点があります。しかし、現在では高い信頼性を誇っています。

薬莢の長さ



.22LRはストレートウォールケースを使用しており、対応する銃器では以下のリムファイアカートリッジを安全に収容し、発射できます。

  • - .22 BB
  • - .22 CB
  • - .22 ショート
  • - .22 ロング
  • - .22 エクストラロング（.22ロングライフルを使用できる銃器に限る）

用途



現在、リムファイア弾は、主に害獣駆除、射撃競技、趣味の射撃、および安価な訓練のために使用されています。ブルズアイ、メタリックシルエット、ピン射撃などの射撃競技、高校や大学、ボーイスカウト、4Hクラブの射撃イベント、オリンピックの射撃競技にも用いられています。

.22LRは、低コスト、低リコイル、低発射音、高精度といった利点がありますが、威力が低いという欠点もあります。護身用として用いられることもありますが、対人殺傷能力も持ち合わせています。安価で入手しやすい点が、その危険性を高めています。

セミオートライフルでは、亜音速弾を使用すると反動が小さすぎて作動不良を起こすことがありますが、ボルトアクションライフルには関係ありません。

.22LRと亜音速弾は、サプレッサーとの相性が良く、発射ガスが少ないため、小型のサプレッサーで十分な効果が得られます。自宅敷地内での遊戯射撃や、人口密集地での害獣駆除に利用されることがあります。

警察や軍の狙撃兵によって限定的に利用されることもあります。イスラエル軍は、暴動鎮圧のためにサプレッサー付きの.22LRライフルを使用しましたが、殺傷能力が低いと判明し、現在はあまり使用されていません。また、CIAの前身であるOSSが、ハイスタンダードHDM消音ピストルを使用したり、アメリカ海軍のNavy SEALsがサプレッサー付きスタームルガーMK IIを使用していた例もあります。

各部寸法



.22ロングライフル弾の最大CIPカートリッジ寸法は、ミリメートル単位で規定されています。一般的なライフリングツイストは、1:16インチ、条数は6、ランド幅2.16mm、ランド径5.38mm、グルーブ径5.58mmです。

公式のCIP判決では、.22ロングライフル弾は最大170MPaの圧力を扱うことができるとされています。CIP規制国では、販売されるすべてのカートリッジがこの最大圧力の125%でテストされなければなりません。

.22LR弾は、かかと付き鉛弾または薄く被覆された弾丸を使用するため、公称弾丸の直径は公称口径の直径よりも大きくなっています。SAAMIは公称弾丸直径を0.2255インチ（公差-0.004）と指定しており、口径は0.222インチです。

銃口初速




実際には、銃器の銃身長や弾薬メーカーのテスト環境によって、速度は大きく異なる場合があります。

参考文献



  • - 床井雅美:著 『メカブックス ピストル弾薬事典』(ISBN 978-4890633357)

関連項目




外部リンク



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