.357SIG弾

.357SIG弾は、スイスのSIG社（現SIG Group AG社）によって開発された、オートマチック拳銃向けのユニークな実包（銃弾）の一種です。「9x21mm SIG」という別名でも知られています。

この弾薬の開発の動機は、高い性能で知られるリボルバー用実包である.357マグナム弾に匹敵する運動エネルギーとストッピングパワーを、オートマチック式の拳銃でも実現することでした。そのため、既存の強力なオートマチック用弾薬である.40S&W弾の薬莢を基に、先端部分をより細く絞り（ネックダウン）、9mm径の弾頭を装着する形で設計されました。

.357SIG弾の最も顕著な技術的特徴は、拳銃用実包としては比較的珍しいボトルネック形状を採用している点です。これは、ライフル弾などに見られる形状で、薬莢の本体径から先端に向けて急激に細くなる首部を持ちます。この形状は、特にオートマチック拳銃の設計上の制約に対応するために選ばれました。具体的には、より短いグリップ長のオートマチック拳銃に適合させつつ、十分な薬莢内部の容積を確保し、目標とする高い性能を発揮させるための装薬量を保持することを可能にしています。このボトルネック形状が、前述の全長短縮化を技術的に支えています。薬莢の材質は一般的な真鍮製であり、ボトルネック形状以外に特筆すべき特別な点は見られません。

性能面では、開発目標の通り、.357マグナム弾に近い高い弾速と運動エネルギーを持つとされています。しかし、実包全体の全長は.357マグナム弾よりも短く設計されており、これがオートマチック拳銃への適合性を高めています。

アメリカ国内の公的機関においては、要人警護を担当するシークレットサービスや、航空機内の安全確保を担う連邦航空保安局など、一部で採用実績があります。しかし、より広く普及している9x19mmパラベラム弾や.40S&W弾と比較すると、特に地方の警察機構などにおいては採用が限定的であり、主流の座を獲得するには至っていません。この限られた公的機関での採用と、警察市場での普及が進まない状況は、民間市場における.357SIG弾の位置づけにも影響を与えています。多くの射撃愛好家や銃器所有者にとって、対応する銃器の種類が少なく、弾薬自体の入手性も他の主要な拳銃弾に比べて劣る傾向にあります。さらに、生産量が少ないことなどから、価格も比較的高価になることが一般的です。

このように、.357SIG弾は、オートマチック拳銃で高威力とコンパクトさを両立するという明確な目標のもとに開発された意欲的な弾薬です。特定の公的機関ではその性能が評価され採用されましたが、全体としては広く普及するには至らず、今日では主要な拳銃弾薬の陰に隠れた、ややマイナーな存在と言えます。しかし、そのユニークな技術的特徴と高いポテンシャルは、拳銃弾薬の進化の一つの方向性を示すものとして注目されます。

関連する拳銃弾薬としては、本弾薬の基となった.40S&W弾をはじめ、最も広く普及している9x19mmパラベラム弾、伝統的な.45ACP弾などがあります。

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